魚の七:アクアリウムの最大の敵はコケではない(コケとの共存、スネール駆除) / 打と居と魚
※ パーカッショニスト木村和人による寄稿は、パーカッショニスト目線の「打・カテゴリ」、DIY関連の「居・カテゴリ」、アクアリウム関連の「魚・カテゴリ」、三つのテーマでお届けしております。
本日は・・・
魚の七:アクアリウムの最大の敵はコケではない
① そもそもの敵は自分自身
アクアリウムにおける敵は人間である。
擬似生態系をつくるも人間、壊すも人間。
水槽を運営するにあたって起こる様々な不具合は、飼育者の凡ミスや無知が引き起こすことは、こちらの寄稿をご一読頂ければ、合点していただけるかと思います。
▼ 魚の三:野生採取株とファームもの、レア水草とは?・・とか言ってたら緊急事態
▼ 魚の四:死の水槽→復活への道→再び崩壊の兆し~あるアクアリストの作業日誌~
まぁ、ここまで極端に崩壊するまではいかずとも、器具の不具合、生体数の推移、餌の変更・やりすぎ、肥料のやりすぎ・・・などによって、この擬似生態系のバランスは崩れます。
バランスが保たれている時、いない時の指標となるのがコケ、であります。
② 次なる敵は・・・やはりコケ? コケ発生のメカニズムと対処法
そもそも、コケは自然界にだってあるものですから、擬似生態系にもあって然るべきものですが、生体や水草を鑑賞するのが多くのアクアリストの目的ですから、コケは無用のものとなります。
いや、むしろ忌み嫌われる存在と言えましょう。
私も幾度となく、コケとの闘いはしてきましたが、きちんとした設備が揃っている限りにおいて、コケの過剰な発生は100パーセント「富栄養化」と言われるもので、これは、水槽内の老廃物を処理しきれなくなった状態。
であれば、先に書いた「擬似生態系のバランスを崩すもの」について、一つ一つ検証して問題を切り分けて行けば、コケ問題は解決します。
最も難敵と言われる、黒髭ゴケは水流の強いところに発生しやすいので、吐出口の向きを工夫する。 あるいは木酢液の類を塗布。
同じような位置づけの難敵アオミドロには、遮光、ヤマトヌマエビの追加など。
藍藻・・・は、富栄養化の前に水槽運営における、水量と生体数のバランスや水槽内を満遍なく水が動いているか・・・設計図そのものの話(私は藍藻が出たことはありません)。
と、ここまでは、アクアリウム全般に通じる話かと思いますが、私のやってるのは水草水槽という、さらに細分化された分野であり、現在の主流であるネイチャーアクアリウム的水草水槽ともまた違った興味関心であることは、このコラム上で数回に渡って述べてきました。
その私から見ますと、アクアリウムを始めた頃よりも、苔に対する許容範囲が広がったようで、アヌビアス類などは、ほぼほぼ黒いスポット状苔に覆われておます。
③ コケとの共存
現在の水槽には、3~4センチのスカベンジャー(掃除係。私の場合は苔を好んで食べる種類の)魚が6名在籍するのみなので、富栄養化の心配はほぼ無く、逆にリン(植物の育成には、窒素、リン酸、カリウムが必要だが、リンは魚のフンに含まれているので過密水槽ではリンが過剰となり、水草が吸収しきれずコケの栄養となる)の配合された液肥を毎日添加しています。
ところで、上記でも分かるように、成長が早い(≒ 栄養を取り込みやすい)水草がふんだんに入っている水槽においては、コケに栄養が回らず、過剰な増殖の防止に役立ちます。
私もかつて、アオミドロに覆われた水槽を、ポゴステモン ・メンメンという水草を大繁茂させることによって遮光なしで駆逐したことがあります。
さて、お魚が足りない分投下している肥料のお陰で、私の水槽も1週間から10日でガラス面を画像のようなコケが覆います。
緩やかな富栄養化です。
このコケが目立ち出したら、そろそろ換水のサイン。
ガラス全面を覆い、緑が濃くなった頃を見計らってスクレイパーで除去しつつ換水。
つまり、現在は換水の時期を知らせるメーターとして苔を利用しています。
④ スネールなのか? 貝なのか?
さて、ここからが本題。
我が水槽人生における、コケよりもやっかいな敵に出会いました。
スネール(貝)であります。
コケと同じように、スネールにも色んな種類がありまして、スカベンジャー(コケ取りだけで無く魚の糞を分解するものもおり、水質浄化の役割も担う)の一員として迎えられる種類もおります。
石巻貝の仲間、タニシ、ラムズホーンなど。
思うにこれらは、飼育者の意志で迎え入れられる者たち。
対して、サカマキガイ、カワコザラガイなど、「いつの間に? どこから?」かやってきた闖入者に対しては、スネールという、アクアリウムにおいては忌むべき呼び名が与えられているように思います。
これらスネールの大部分は、購入した水草についてやってくることが、ほとんどでしょう。
目に見えない稚貝のうちに、あるいは卵として。
「水草その前に」という薬剤で、それらを除去してから水槽へ導入・・・という流れが一般的ですが、それをもすり抜けた場合「いつの間に??」ということになります。
⑤ スネール駆除に最適な生体兵器@水草水槽
これらスネールが嫌われるのは、1匹、2匹であれば、まぁ良かろう・・・と思っていても、そのうち大繁殖する可能性があるからで、その結果、生体数のバランス、鑑賞上の問題、それから水草水槽においては「殻が溶けることによって硬度が上がる → pHがアルカリに傾く」という弊害があります。
よって、駆除の対象となるわけですが、その方法は、
- 薬剤
- 生体兵器
- テデトール
あたり。
が、楽しみの多くを、クリプトコリネ・キーの繁茂に求めている私にとって、薬剤の選択肢はありません。
テデトール(手で取る)は、何度やっても見逃しは必須なので、完全なる駆逐には程遠い。
よって、生体兵器に頼ることになります。
貝食のサカナは、何種類かおりますが、水草を食べるもの、大きくなりすぎるものはNGなので、私の選択肢はアベニーパファ一択です。
かなりの強健種であり、水温さえ適正であれば、無濾過、無加温、足し水のみの屋外ビオでも生存可能。
いや、生存可能なんてもんでは無くて、我が家の180ℓトロ舟ビオトープのサカマキガイから、ラムズから、たった一匹で全てを食べ尽くした夏もありました。
一時は、数本あった水槽内のラムズホーン有り無しを変更するのにアベニーの引っ越しをしていましたが、一月程でこちらの意図通りの結果になったものです。
⑥ 終わりなき闘いのはじまり~ヒラマキガイ
そして、現在の敵は、ヒラマキガイ。
これも、出どころは屋外ビオから本水槽へ戻した水草・・・と特定していますが、屋外ビオになぜ現れたのかは謎です。
先のリンクの水槽崩壊のきっかけとなったのは、こやつを駆逐する為に導入したアベニーの為の赤虫であったことを考えると、そもそもの崩壊の原因は此奴らです。
そして、崩壊当初、何らかの病原菌による崩壊を疑っていた私は、水槽やフィルター、大磯砂からホースに至るまでの煮沸消毒、及び、可能な器具類は塩素消毒を施しました。
リセットといっても良いくらいに。
なので、相当数のヒラマキガイが駆除されたはずですが、消毒されなかったもの・・・つまりは水草周りに身を潜めて幾らかのヒラマキガイは生き残ったはずで、その生き残りが大繁殖して現在に至るのです。
そこで導入したのは、トーマシーでしたが、トーマシー自体があまりにも大繁殖するので水草水槽には向かず、アクアテイラーズさんに引き取ってもらったのは、やはり先の寄稿の中で述べました。
よって、私は最強のスネールイーター、アベニーを、またお迎えすることになります。
⑦ 狡猾なスネール
導入初期のアベニーは余りにも小さく、いかな小型のヒラマキガイと言えど、捕食できるのかの心配がありましたので、それなりのサイズになるまで・・・と、サテライトで育成していましたが、ある日試しに親貝サイズを投下してみたところ、しっかりと捕食する姿を確認しました。
すぐに、本水槽へと向かってもらい、ものの1ヶ月でヒラマキガイの姿は見えなくなりました。
換水の際、地表にはヒラマキガイの殻が吸い上げられ、最強のスネールイーターは再び、水槽内のスネールをゼロにしたのだと確信しました。
しかし、そうではなかった・・・
ある夜、たまたま水槽設置場所にいく事があり、初めて水槽の異変に気づきました。
夥しいヒラマキガイが、そこら中を跋扈していたのです(先程の画像は夜間に照明をつけた様子)。
アベニーパファーは目で捕食対象を見つけるタイプのサカナです。
どういうわけか、それを知ったヤツらは昼間はどこかに隠れ、夜に活動することを覚えたのです。
照明のついた昼間は姿を見せないので、満足いく水草水槽の姿ですが、夜はスネール天国だったわけです。
これにより、一度はアベニー(基本的に生き餌しか食べないとされています)の人工餌の餌付けを完了した私ですが、方針を転換し完全に餌を断ちました。
いまだに、丸々と太っているところを見ると、藪の中に分け入りヒラマキガイを捕食しているものと思われます。
これは、やはり換水の際に吸い上げる貝殻が多数あることで間違いありません。
それから、たまに夜間にテデトールをすることにもしました。
何故たまにかと言うと、連日行うとこちらの動きを察知して、夜間でも姿を現さないからです。
そして、その「たまに」のテデトールを行う頃には、再び画像のように数を盛り返しているといった具合。
まさに終わりなき闘いです。
⑧ 掃討作戦
ある日私は、大掃討作戦を行いました。
作戦の内容はこうです。
- 不意打ち的に夜間に照明を点灯
- 目に見えるヒラマキガイはテデトール
- 恐らく、最大の根城、アヌビアス類を巻きつけた巨大流木に水道水シャワー攻撃で物理的にこそげ落とす
アヌビアスの木は、高さ40センチ、外周20センチほどはあり、三又に分かれており、木のウロがたくさんあります。
ここから排除されたスネールはざっと100前後。
テデトールで50強。
作業中私は異変に気づきます。
水流が弱い。
さらに嫌な予感。
フィルター内まで侵入しているのでは・・・
水流の弱さの原因は、吸水口の溝にヒラマキガイが詰まっていることによるものでした。
稚エビとヒラマキガイの侵入防止のために吸水口にはスポンジを巻いていますが、わずかな隙間からヤツらは侵入。
それからスポンジ内には非常に小さな稚貝が侵入可能、と言うわけです。
これらのことから、フィルター内への侵入は避けられないことに思えました。
スポンジに熱湯をかけますと、出るわ出るわ。
手のひらサイズの全長のスポンジには50強のヒラマキガイが潜んでいました。
そして、予想通り居ました。
ろ材からフィルターケースまで細かいのがたくさん。
私のシステムは、水槽 → サブフィルター → メインフィルター → 水槽、といった具合に水が循環しています。
今回開いたのはサブフィルター。
私がネイチャーアクアリウム派であれば、即全リセットで生体だけ仮住まいをさせ、水草は廃棄か「水草その前に」で攻め(徹底するなら全廃棄)、全ての器具と大磯を完全乾燥数日・・・と言うところですが、私は水草マニアの端くれ。
ただいま、調子を上げているCry.キーの為にも、その他の養生中の水草のためにも、その方策は取れません。
また、キーの為には、両方のフィルターを掃除する(=大きく水質が変わる)ことはできなかったので、メインフィルターの手前までの煮沸をしました。
今回駆除したのは数百のヒラマキガイでしたが、おそらく同じ数か、数倍のものが生き残っていることでしょう。
それだけの数になると、この水槽の生態系の一部を担っているはずなので、完全なる駆逐を目指すのは環境破壊になるかも知れず、それはそれで悩ましい事態。
しかしながら、吸水口を詰まらせたところを見ると、水槽の最深部にして心臓部であるフィルターのインペラー周りに達してモーターの阻害を・・・という可能性は残るのであり、テデトールとアベニーの二人三脚で何とか駆逐したいところです。
まさに、終わりの見えない闘いが始まったのです。
・・・先程、掃討作戦から4日を経てテデトールをしました。
やはり、掃討作戦直後は警戒したのか夜間も姿現すことはありませんでしたが、数日あけると跋扈していました。
今回の駆除数は100弱。
フグは寝ている・・・。