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狩猟 / #2 獲物

CULTURE, GOURMET

※ いのちを考える意味で、多くの人に読んで欲しいですが、血生臭い表現や描写が出てくると思いますので自己判断で拝読ください。決して無理しないでください。

#2 獲物

アライグマが獲れてから10日ほど経つが、掛かる気配がない。。。
餌場の餌は減っているし、足跡もある。
見当違いなことしているんじゃないかと、経験値の低い僕はどんどん不安になる。

本来、猪はとても臆病な生き物。
目が悪い(人間でいうところの0.1くらいらしい)分、鼻は犬並みに効くので匂いに敏感。
なので人間の匂い、罠に使ってるワイヤーの匂い、地中の土や木の根の匂い、、少しでも違和感を感じたら、すぐさま通る道を変えしまう。

理由が何であれ、掛かってないことには変わりがないので、掛かる可能性の低そうな罠を撤去。
自分自身に半信半疑ながら、脚取りを予測し、また違う場所に気配を残さないよう慎重に罠を仕掛ける。

それから数日経った12月初旬。
1つの罠が飛び出している。
空弾きだ。。

落とし穴の上を通ってはいるけど、ギリギリのところで回避された様。

初の猪の痕跡にわくわく。
1度空弾きされているので、当分同じ道通らないかもと思いながらも、もしかしたらと思い同じ場所に再設置。

・・・

再設置から3日後。
いつものように、朝から見廻りと餌撒きのために山に入り、いつもの道を歩いていると

「ドスッ」

聞いたことのない音が聞こえる。

恐る恐る、音のする方へ。。。

猪や!!!
しかもかなりの大きさ。

この日は御節の予約の締切日ということもあり、問い合わせも沢山きてて、脳内はプチパニック。

焦ってもどうしようもないので、すぐ様師匠に連絡を取り、手伝ってもらうことに。
運良く友人も近くに来てたのでヘルプを要請。

捕獲途中で罠が外れて、猪に襲われることもあり最悪の場合命を落とす事もあるので、罠がしっかりと掛かっていることを確認。

みんなのチカラを借りて、鼻を括り、動けなくするため、脚も括る。
大きくパワーもあったので、ここまででも一苦労。

括った猪を止め刺し、解体する為、引っ張って山を降りる。
これがまぁ大変で大人3人がかりでやっとこさ。
なんせ大きいので吊るすのも一苦労。

ここまできたら、ようやく止め刺し。

山の神さんと猪に感謝して、できるだけ苦しませないように、しっかりと場所を確認して、心臓か頸動脈を狙ってナイフで一突き。
苦しませないようにと言いましたが、一回で綺麗に血を抜くことで、お肉も美味しく頂くことができます。

命を貰う、命を無駄にしないための大事な場面。

上手いこと頸動脈が切れて、赤い血がドバッと流れ出る。
血が出切ってグッタリした猪の腹を割いて、内臓を取り出す時、臓器の生温かさでリアルな死を感じるものの、抱く感情は可哀想などという感情はなく、感謝の方がしっくりくる。

内臓も本当は全て食べたいんですが、多忙な時期だったこともあり胃や腸は諦め、今回は処理の簡単な臓器(心臓、肝、膵臓、腎臓、網脂)とヘレ肉だけ取り出しました。

捕獲当日にできる作業はここまで。

肉の冷却と血抜きのため、一晩川など水の中に沈めておきます。

2日目

解体作業の日。

名人と呼ばれるの猟師さんだと、数時間で終わる解体作業。
まだまだ勉強中の僕だと半日作業。。。

技術的な話はここでは割愛。

皮を剥いで、首を落とし、部位ごとに分けると美味しそうな塊に。
推定80kgのメス猪は、よく脂ののった極上のお肉へと変貌しました。

手伝ってくれた師匠や仲間とお肉を分け合い帰路につくのでした。

・・・

次の日の晩御飯は猪のヘレカツとリブのグリルでした。

感謝して頂きます。
美味。

 

つづく。

下川 強史(ごはんや ルリカケス) さんの過去の記事