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CULTURE

道楽がつくった阪神間文化 ①

CULTURE, LIFE STYLE

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阪神間は、大阪の企業家の別荘として発展してきた部分と、地場産業の展開地として栄えた部分とがあって、感覚的には両者は阪急沿線と阪神線以南に分かれているようだ。今では武田、乾、大林、村山など阪急以北の企業家の豪邸のほうが知られているが、御影(東灘区)の造り酒屋の次男坊だった養父は、ほんまの金持ちは、南のほうや、と言っていた。造酒家や廻船問屋のことなのだろう。自分の家は御影の浜のほうにあって、材木商から酒屋になって、大戦の頃に菊正宗に売却しただか何だか、とっくに没落していたから、そこには何がしかの思いがあったかもしれない。

阪神・淡路大震災では、多くの造酒家が被害にあった。小学校の同級生の魚崎南町の蔵も全壊し、廃業した。震災後、一度彼がぼくを訪ねて来たことがあったらしい。連絡先を残してくれなかったので、その後会えていない。跡地は高級そうなマンションになっている。小さな造酒家は、震災の20秒ほどの揺れに、一たまりもなかったのだ。その近所の規模の大きな菊正宗や櫻正宗は今も多くの蔵を構えており、記念館を設けて酒造りの工程をわかりやすく解説したり、道具を展示したりして酒文化の伝承に努めている。

高校の同期や後輩には、大きな企業の御曹司がいた。一人は順調にその経営者として辣腕をふるっているようだ。一人の親族が経営する企業は在校中に倒産し、創業者一家の陶磁器のコレクションは他の企業から大阪市に寄贈、収蔵されたと聞いている。一人の親族一家は何があったかは詳しくないが、その企業から離れたと聞いた。いろいろある。

メセナ(mécénat 企業による社会貢献)という言葉が流布するずっと前から、企業家の多くは、学校を作ったり、道楽と称して美術品の収集にいそしんだりしてきた。この連載では、阪神間の企業家たちの史蹟や建物、維持している美術館や資料館を訪ねて、ぼくたちをはぐくみ、ぼくたちが楽しんでいる阪神間という場所の魅力を探っていこうと思う。郷土史に詳しいわけでもないし、多くの資料を持っているわけでもないので、ごく私的な探訪になる。たとえば、うちから櫻正宗には歩いて行けるので、ちょっと寄ってみたよ、という具合だ。レストランやカフェ、記念館、ギャラリーになっていて、時々サロンコンサートも開かれているようだ。そんなところに、これを機に足を踏み入れてみようかという、緩やかな名所めぐりを、どうでしょう、ご一緒しませんか?

櫻正宗
https://www.sakuramasamune.co.jp/

櫻正宗記念館
https://www.sakuramasamune.co.jp/sakuraen/sakuraen_index.html

灘五郷の一、魚崎郷の入り口

魚崎八幡宮の一画。櫻正宗の社主、山邑太左衛門の名が随所に刻まれている

櫻正宗記念館の展示

櫻正宗記念館外観

正宗の背景に桜