オスマン古典音楽 / From Occident to Orient vol.6
1月に入って日本は非常に寒い日が続いているようですが、ここドイツも1月に入って寒い日が続いています。
ベルリンはあまり雪が降らないイメージがあったのですが、今年はよく雪が降っています。ただ、昔はよく雪が降り、氷点下10℃ぐらいまで下がる日もあったようですので、これが本来のベルリンの姿なのかもしれません(笑)2017年の春に来たので、もう4度目の冬となるのですが、過去3度の冬と比べても雪の日が多いように感じます。
さて、11月から始まったロックダウンですが、幾度の延長で引き篭もり生活もすでに2ヶ月半も経ってしまいました(笑)だんだん規制が厳しくなり、12月半ばにはスーパー等のライフラインのみが営業を許可され、飲食店はテイクアウトのみの営業といった去年の春のような形になってしまいました。
ちなみにこの記事の執筆時で2月14日までの延長が検討されています。
そんな感じの状況により、街やカルチャーのこともあまり書けませんので(笑)、今回はオスマン古典音楽について書きたいと思います。
オスマン古典音楽
オスマン古典音楽とはオスマン帝国で発展したトルコのクラシック音楽のことで長い歴史を持つ洗練された宮廷音楽です。
西洋のクラシック音楽は和声(ハーモニー)が発展していきましたが、トルコのクラシック音楽では主に旋律(メロディー)と拍子(リズム)が発展し、基本的には独自の旋法体系(マカーム)とリズムサイクル(ウスル)で楽曲が構成されています。
今回はオスマン古典音楽の醍醐味の一つと個人的には思っているサズセマーイと呼ばれる形式の楽曲を数曲ご紹介したいと思います。
サズセマーイは基本的にはアクサク・セマーイという10拍子のウスルが使われた器楽曲のことで、基本的な構成はハーネと呼ばれるメロディーパートが4パートあり、各ハーネのあとにはテスリムと呼ばれるリフレインパート(要は歌でいうサビで一番印象に残りやすいパートと言えます)が来ます。
第一ハーネとテスリムでその曲のマカーム(音階)を提示し、第二、第三ハーネでは別のマカームへの転調や展開で盛り上げていき、第四ハーネではウスルも変わって(3拍子や6拍子になることが多いですが、その他の拍子もあります)盛り上がりは最高潮、そしてテスリムで落ち着いて締める。といった構成になっていてとても聞き応えがあります。
Cinuçen Tanrıkorur / Nihavend Saz Semaisi
実際に聴いてみましょう。
まずはトルコ共和国建国後に生まれたウード奏者で作曲家でもあるCinuçen Tanrıkorur(ジヌチェン・タンルコルル)のNihavend Saz Semaisi(ニハヴェント・サズ・セマーイ)という楽曲です。
ニハヴェントという音階で構成されていますが、西洋音楽のマイナースケールのようなマカームです。なお、この曲にはMehtapta Yakamozlar(メフタプタ・ヤカモズラル、月明かりの煌めき)というタイトルが付けられています。
下記の動画5:21辺りから本編ですが、その前のカーヌーン、ウード、ヴァイオリンそれぞれのタクシーム(即興演奏)も非常に素晴らしいです。
Nikolaki / Şehnaz Saz Semaisi
次の曲はNikolaki(ニコラキ)というイスタンブールで生まれ育った19世紀のギリシャ人のケメンチェ奏者のŞehnaz Saz Semaisi(シェヒナーズ・サズ・セマーイ)という楽曲です。
動画で演奏しているウード奏者もギリシャ人でYorgos Mavromanolakis(ヨルゴス・マヴロマノラキス)という活躍されてた素晴らしい奏者なのですが、惜しくも2017年に交通事故で39歳という若さで亡くなられました。
このソロ演奏は素晴らしいのでこちらをご紹介したいと思います。
Udi Nevres Bey / Hüzzam Saz Semaisi
最後に19世紀後半に生まれたウード奏者、Udi Nevres Bey(ウーディ・ネヴレス・ベイ)のHüzzam Saz Semaisi(フザム・サズ・セマーイ)という楽曲です。
フザムはとても不思議な響きのマカームで僕の好きなマカームの一つでもあります。動画はTRT(トルコ国営放送)の音楽番組での演奏です。
これだけのオーケストラの演奏ですととても壮大ですね。
いかがでしたでしょうか? 日本の音楽や西洋音楽にはない魅力が沢山あると思います。
楽器のこととかまだまだいろいろご紹介したいこともあるのですが、また別の機会に記事にできればと思っています。
*ちなみにトップ画像はベルリンの地下鉄(U-Bahn)の駅に描かれている絵です。