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版画と音楽 / 或るベーシストの思考回路 ⑦

ART, MUSIC

ベーシストの泉です。
現在、緊急事態宣言が施行されて大変な状況ですが、
皆さん健康にはくれぐれも気をつけて、早く終息する事を願いましょう。

版画と音楽

さて、今回のテーマですが、「版画と音楽」とは。

4年前の2017年に制作した「音の国の鬼」というアルバムがあります。
サブタイトルは「西藤博之の木版画のためのエレクトリック・ソロ・ベース組曲」です。
そのタイトルどおり、完全にベースだけで構築した作品です。

制作したきっかけは、富山在住の版画家の友人、西藤博之 さんの作品にインスパイアされたからです。

彼の作品には鬼がよく登場しています。
それも、ギターを弾いたりドラムを叩いたりしています。
そう、鬼になぞらえた人間を描いているのだと思います。
日本の鬼は、西洋のデビルとは違い、人間の業が産み出した存在かと思います。
そう、人間の業が生み出した人間の化身かと。
なので、どこか親しみ深い存在に位置しているのだと思います。
鬼は人間ではないけど楽器を奏でることで、その時間だけは人間と同じに様に自己を解放出来た、そんなテーマを版画で描かれていたのだと思います。

この作品の版画は、ベースを弾く鬼です。
この作品を発表した時によく「モデルはあなたですよね」と言われましたが、実は僕と出会う前に、この作品はあったのです。
でもそれが何か運命的なもの、と感じて、この作品に音を付けたい衝動に駆られたのです。

そしてこの鬼が、鬼の国に生まれ落ちて、人間界に降り立って色んな事に遭遇し、思い悩んだ後にまた鬼の国に帰っていく、というストーリーが浮かびました。
それは鬼に擬えた人間の一生でした。

そしてこの6つのテーマが浮かびました。

誕生
彷徨
独奏
我想
葛藤
帰途

この作品を作る上で考えた事があります。

絵画などの美術には時間軸は存在しないですが、音楽は時間軸の中でのドラマ、表現ですね。
しかし、静止画である写真や絵画でも視覚的には一瞬ですが、観る人に時間軸のあるストーリーを想起させる力があると思います。

音楽も一つの曲の中で幾つかの構成によって、曲の中のストーリーを構築していく事が多いですが、そのそれぞれの転換場面は、一瞬のサウンドの断面のインパクト、一瞬のサウンドの絵画的描写と表現だと思います。
それは写真と映画の違いの様で、一瞬~ワンフレームを幾つも連ねれば時間が生まれると言う事に似ているかもしれません。
瞬間のサウンドやハーモニーのインパクト、美しさを追い求める事が大事かな、と思ってます。

そんな想いで作った作品です。

試聴版のYouTubeがありますので、是非聞いてください。

ではまたお会いしましょう!