映画と音楽【その1】/ 或るベーシストの思考回路 ⑧
こんにちは、ベーシストの泉尚也です。
私が好きな映画作品は色々とあるのですが、その映像に付けた音楽が秀逸だと思う作品を2本紹介します。
パリ・テキサス
1984年製作
監督:ビム・ベンダース
音楽:ライ・クーダー
タイトルのパリと言うのは、フランスではなくてアメリカテキサス州の小さな町の事。
記憶を失って失踪した男が、別れ別れになっていた妻と子供との再会を描くロードムービー。
映画自体としても素晴らしい作品なんですが、主人公の孤独な内面を代弁する様に、ライ・クーダーがアコースティックのスライド・ギター1本で表現しています。
スライド・ギターとは金属やガラスのバーを指に付けて弾く奏法ですが、フレットに触れずに指板上をバーでスライドさせる事で、普通のギターの奏法では得れない微分音の表現ができる様になります。主にブルース系の音楽で多様されてます。
ライ・クーダーはそのスライド・ギターの名手として有名で、リーダー作では主にアメリカをはじめ世界のルーツミュージックをベースにした作品が多いですが、この映画音楽ではそういう音楽エッセンスを吸収した上での、オリジナルなスタイルのスライド・ギターになっています。単音を中心としたその微分音の表現が素晴らしいです。
私も音程が自由なフレットレス・ベースを弾いているので、この映画のギターは感動的でした。
この【パリ・テキサス】、最近デジタルリマスター版が発売されてます。映像も秀逸なので是非ご覧ください。
デッドマン
1995年製作
監督:ジム・ジャームッシュ
音楽:ニール・ヤング
さてもう1本の映画ですが、若き日のジョニー・ディップが主演した「デッドマン」
こちらも19世紀の西部を舞台に、ある理由で街を追われた男が森に逃れ、そこでネィティブ・アメリカンに助けられ、一緒に旅をすると言うロード・ムービー。
先ほどの【パリ・テキサス】も主にギター1本の演奏でしたが、こちらもニール・ヤングの主にディストーション・ギター1本による伴奏です。
ニール・ヤングは、シンガー・ソングライターのカリスマとして余りにも有名ですが、この映画では歌は歌わずエレキギター1本で即興で映像に付けていったという話です。
こちらも主人公の心象を、歪んだ音で表現しています。
サウンド・トラックとしては希少なスタイルですが、モノクロの映像と相まって独特の世界観を醸し出しています。
映画自体は異色な内容ですが、こちらもお勧めです。
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次回は、映像につける音楽の役割的な観点から書きたいと思います。
ではまた!