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CULTURE

狂乱の発表会

CULTURE, MUSIC

鳴尾二胡教室では冬季と夏季とに分け、年に2回発表会を開催している。 他の二胡教室と比べて多いと言われるが、緊張との付き合い方、覚悟の決め方、本番ならではの集中力、発表会という締め切りがあることでのモチベーションのアップ、他人の演奏を聞くことによる、上達過程での自分の現在位置の把握など、人前に出てしか得られない経験を通じての演奏力の総合的な向上を目指している。 あくまで、建前である。 8割方、単に祭り好きな私の気質による。(残りの2割は、「一人でちんたら練習していても上手くなるかい!」という本当の教育的配慮である。)

夏の発表会は例年およそ7月ごろに行われ、普段は演奏する機会のない、中国伝統の二胡独奏曲を中心に、クラシック、歌謡曲など日頃の練習の成果を披露するべく、さまざまな曲目がプログラムに並ぶ。 協奏曲などの大曲になると10分を超えるものも珍しくないので、多い時は朝の11時から夕方6時ごろまで、基本的に独奏が延々と続く。 本当に延々と続く。 そしてその後、そのまま同じ会場で打ち上げに突入する。 不参加は当然許されない。

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こちらが表の発表会とするなら、裏と言えるかもしれない冬季の発表会は、俗に「歌モノ発表会」と呼ばれる。 その名の通り、歌モノ縛りである。 歌詞がついていて、カラオケにあるような曲であれば、何を選んでもいい。 これも建前としては、弓を操る右手の表現力を如何にして磨くか、というテーマに基づいて発案されたことになっているが、コスプレしたいだけでは、と問われると返すことのできる言葉はあまりない。

右手の表現力を磨くために、最初は演歌を推奨していたが、昭和歌謡、流行のポップス、アニメソングなど、みんながここぞとばかりに選んでくるお気に入りの曲は実にバラエティーに富み、演奏者の思い入れもしっかりあるので、続け様に聞いても飽きることがない。 これまで知らなかった名作や、二胡で弾くとしっくりくる意外な曲がザクザクと掘り出され、お互いの勉強にもなる。

そして、衣装に凝る。 なぜか凝る。 前々回の教室訓の時にも書いた通り、演奏においての視覚的要素は軽視してはならないとは指導するが、最早先生の思惑を遥かに超えたレベルの完成度を以って臨んでくる。 アフロ、金髪等の各種ヅラは当たり前、ついにはスダレまで登場した。 ジュディ・オング、船長、怪人、トルコ人、アントワネットに大阪のおばちゃん…そして曲の合間、または演奏しながら見事なダンスまで入る。 人によっては、自分の出演以外に友人の伴奏やバックダンサーを頼まれて、最大5着もの衣装を持ち込む猛者もいる。 そして最後は全員立ち上がり、踊り狂うこととなり、もはやなんの会だったのかよく分からなくなるが、終わった後のやり切った感と虚脱感だけはものすごい。

今年はコロナの状況を見つつ会場の予約をと思っているので、例年の冬季ではなく初夏の開催を目指してこれから計画を練るが、長い逼塞の時期を経て溜め込まれたエネルギーが爆発するのが怖いような、楽しみなような。

薔薇は美しく散る。

同一人物

手作りです。

5回衣裳替えをした例。

オタマトーン部隊も大活躍(※ 二胡の発表会です。)

各種カツラ(※ 二胡の発表会…)