國久真有 – 絵を描くことが出来なければ死んでも良い
今回紹介したい作家さんは、國久真有さん。
彼女は身体を軸にして、身体性を持ったドローイングで円をひたすら描きつづける画家、表現者です。
岡本太郎現代芸術賞 特別賞などを受賞するなどの実力派。
彼女の魅力は、無心に向かうその表現への向き合い方だと私は感じています。
邪念を取り除き、ただひたすら手の軌道を利用し、見えないものを可視化しようという、試みには、とても引き込まれるものがあります。
あまりカテゴライズした言い方は好きではないのですが、アクションペインティングと呼ばれる、具体的な対象を描くのではなく、その瞬間、その一瞬の、描く行為自体を重視した表現技法を用いているように思われます。
彼女は、絵を描くこと以外の時間はもったいないと考え、描くことができないのであれば死んでも良い、生きている意味がないのだと言います。
もし80年しか生きられないのだとしたら、自分には何ができるのだろうか、何が残せるのだろうか。そう考えた時に彼女が生きる全てのエネルギーは “絵を描くこと” だと。
何かに没頭できるツールを見つけることは正直誰にでも出来る事ではないと思います。
そういったツールを持っていなくても、観る側として感じる事はできます。
ただ、真っ直ぐに向き合う彼女の眼差しや、生まれてくる作品から感じ取れるエネルギーは、芸術の力であり、観る側に投げかける生きる力の様に感じます。
無心に、子供の頃のように素直に純粋に描き続きる姿はとても美しく、私をまた、ものづくりにおいて初心の気持ちに戻らせるのです。
抽象絵画をみて、よく聞く言葉があります。
『どうやって見たら良いのかがわからない』
『わからない』
わからなくて良いのです。重なり合う線や、点、色や、光や影などから何かを感じれば良いのです。
むしろ、その時には作家さんの想いや考えなどは無視しても良いのです。感じるまま、思うままで。
観る側も純粋に感じてみようという扉を開けてあげる事が何より重要な事なのだと思っています。
彼女の展示が現在、神戸北野美術館で9月14日まで開催されています。
また、9月12日から11月23日まで六甲山でグループ展示会をされるそうです。
六甲山の展示では普段はする事のない壁画にも挑戦されるようです。
是非、彼女の芸術に触れてみてください。