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ライブハウスのクラウドファンディング

MUSIC, CULTURE

とうとうクラウドファンディングに舵を切ります。

ライブハウス神戸VARIT.は、元々大阪を拠点にライブハウス事業を発展させてきた「アームエンタープライズ株式会社」が運営するライブハウスでした。

僕がアルバイトで入った2005年、もちろんアームのアルバイトとして働き始め、大変給料が安かったことを思い出します(笑)。

でも、お金じゃなかったんよねぇ。

月に125,000円のアルバイトだったとしても、それ以上に「このままだとVARIT.が潰れてしまうんです」という当時のスタッフの言葉に、そして彼らが南出を頼って来てくれたことに、「なんとかしたい!」という気持ちが溢れてました。

その後、店長となり、アコースティックデュオ「にこいち」をマネジメントするのをきっかけに、「2つの軸が出来たなら、独立してみるか」とアームエンタープライズの岸本社長に言われ、二つ返事で「有限会社アームテックパブリシャーズ」の代表取締役として独立。

VARIT.は本社の運営を外れ、アームテックパブリシャーズが運営することとなりました。

ライブハウスの財産って?

今回のコロナで、僕は独立していたので、借金ももちろん自分の判断でしたし、ライブハウスVARIT.の持続化給付金の申請も出来ました。

ただ、アームエンタープライズは大阪・京都で8つのライブハウスを運営していて、持続化給付金の申請は1事業者につき、1申請。

これでは焼け石に水。。。

同じグループ会社として、本当に辛くなって来ていて、一丸となってクラウドファンディングに挑むことにいたしました。

ライブハウスの未来をつなぐご支援を|45年間の歴史を一冊に
https://readyfor.jp/projects/arm

ただ「HELP」というのは何だかずっと違う、と思っていて、VARIT.でも実は5月にクラウドファンディングを立ち上げようとしていたのですが、踏ん切りがつかず、断念していました。

アーム岸本社長ともこの3ヶ月ほど、本当に色々とミーティング・相談を重ね、何か「我々らしい支援の募り方」が出来ないものだろうか、、、と話していました。

僕が真っ先に考え始めたのは「ライブハウスの財産ってなんだろう?」ということ。

いつも思っていることですが、「売れる」とか「有名になる」とか、音楽ってそればかりが大切なことじゃない、と思うんです。

もちろん音楽を作ったり奏でたりすることで生活していけるなら、それはとても素敵なことなんだろうな、と、僕自身も思っていましたし、若いバンドマンたちもそこを目指している子たちは本当に多い。

でも、才能なのか、運なのか、はたまたもっと別の要素なのか、100アーティストいてもメジャーデビュー出来るアーティストはほんの1つか2つ、多くても5つもないと思う。

メジャーデビューだけがゴールじゃない、って本当に思うんです(あ、誤解しないでくださいね。メジャーデビュー、僕だってしたかった!)。

だって、結局全然有名になってないけれど、素晴らしい音楽を僕は神戸VARIT.でたくさん聴いてきたし、このライブハウス神戸VARIT.で、目の前の、ほんの2、3人の人生を変えたであろう瞬間も、そのウタもたくさん知ってる。

新型コロナで営業が出来ない中、ライブハウスの財産って、この「2、3人の人生を変えたウタ」なんじゃないかな?と思い至りました。

岸本社長にもそんな想いを伝えると、岸本社長は岸本社長で閃いたことがあった様子でした。

後々聞くところによると、岸本がライブハウスの運営に携わり始めた1975年から2020年までの45年、この45年を一冊の本にまとめたい、とのこと。

そう、歴史そのものが財産なのではないか、とのことだったんです。

VARIT.8周年イベント_2012.7.23

会社の社長って?

実はVARIT.の店長になるまで、岸本社長とは会ったことも喋ったこともなかったんです。

それなのに「なんでオレが店長なんやろ?」と思い(ちょっと突っ張ってました。笑)、初めて食事を一緒にした時に、聞いてみたんです。

そしたら「そんなもん、岡田と村井が薦めるからや」の一言(岡田というのは神戸鉄人プロジェクトの岡田さんで、村井というのは当時のVARIT.店長の村井さん。どちらも僕をライブハウス業界に引き入れ、抜けられなくした人たちです。笑)。

村井さんからは「南出くん、店長になったら給料、8万円くらい上がるで〜」なんて唆されてたもんで、そのことも岸本社長に言うと「なんも知らんねんな。給料なんて1円も上がらへん。けど、店長になったら経費っちゅうのがあるんやぞ」の一言。これで、おしまい(笑)。

それ以来、今年72歳の岸本社長とは、馬が合う、と言うかなんと言うか、、、いろんなことを教わるようになりました。

経営のこと、人生のこと。

今思えば、店長時代は、僕が独立し、社長となれるよう、基礎を教え込まれていた時期なんだと思います。

「自分で独立したい、と思って独立するもんじゃない。まわりに独立を期待されて、初めて社長にはならせてもらえるもんや」などなど。

そうしてライブハウス神戸VARIT.とアーティスト「にこいち」のマネジメントで会社を始め、今はもう「にこいち」は独立しましたが「THE TOMBOYS」のマネジメントと神戸・兵庫でのイベント立ち上げ事業などを自分の意思決定で開拓していくようになりました。

そして、コロナ。

資金繰りや借金、様々な申請ごと。それでいて現場の切り盛り。

実はこのコロナのおかげで岸本社長とも「社長対社長」で話をしてもらえるようになって来たことを感じるようになりました。

僕の運の良さ

岸本社長とはこんな関係を約10年ほど掛けて築いて来たわけですが、「ライブハウス」がどうやって生まれ、発展して来たのか、と言う話題は常々僕らの会話の中に出て来ていました。

例えば「別途ドリンク代600円」っていうのがありますよね?チケット代払っているのに、なんで入場時にまた別にドリンク代、払わなあかんねん、って思った方もいるんじゃないでしょうか?

元々「ライブハウス」なんていう言葉はなく、「演奏の出来るロックバー」というようなスタイルで始まったようなんです。

当然「ロックバー」ならアルコールを飲むのが基本ですし、そこにアンダーグラウンドなライブをするアーティストが出演し、そのアーティストにもギャラを支払いたい、となる。それをミュージックチャージとして設定し、例えば2,000円で販売。

元々がバーですから、ウェルカムドリンクでも付けようか、という発想で、その2,000円の中に、1杯、ドリンクが付いてたってこと。

そして、ロックバーに出ていたアンダーグラウンドなアーティストが「テレビ出演」を果たすような時代になってくる。

ロックバーでは「ボトルキープ」がこれまた当然のようにシステムとしてあって、ボトルキープしてくれたお客さんにはオリジナルのTシャツをプレゼントしていたようです。

そのTシャツがたくさんあるもんやから、アーティストにあげてたようなんですが、そのアーティストがTシャツを着て、テレビに出演するもんで、「あのTシャツはなんだ?欲しい!」となり、ロックバーにお客さんが殺到するようになる。

そこに「プレイガイド」という存在が世の中に出て来て、今までは大きなコンサートしかチケット取り扱いをしてなかったのに、ロックバーのチケットも販売したい、ということを言い始め、プレイガイド手数料を約10%ほど取られるようになる。

「1ドリンク付2,000円」のチケットをプレイガイドで販売すると、約200円のプレイガイド手数料が取られるわけですが、お店の財産であるその1ドリンク代も10%ほど手数料が取られてしまっていることになりますよね? それはあまりに馬鹿らしい、、、ということで、ドリンク代を外してしまえ! ということで、「1ドリンク別1,500円」のチケットが生まれた、ということなんです。

そしたらプレイガイド手数料は150円で、お店のお酒にはプレイガイド手数料がかからない。

これが「1ドリンク別」のシステムの始まりだった、と。

なんか、、、痺れません?

今でいうところのイノベーションでしょ、これ。

そういったことが時代と共にあり、問題が出て来てはそれを解決して、次へ進む。

もっと他にも、たくさんいろんな話を聞きました。「1ドリンク代別」を巡って、裁判沙汰にもなったことがあったようですし(笑)。

アームエンタープライズに対して「ライブハウスのチェーン展開化」という、なんともトゲのある言い方をする人たち、実はたくさんいます。

でも、こうやってシステムを作って来た岸本社長のアイデアとバイタリティと人脈など、本当に尊敬できるものだと思いますし、そんな人物と出会えたのは、僕の「運の良さなんだ」と、今では思っています。

ゴルフを教えてもらったのも岸本社長だったなぁ。

またゴルフに関しては後日改めて書いてみたいですが、ゴルフって経営そのもの、人物そのものを表しているような気がして、奥が深い、、、と感じています(笑)。

我々らしく支援を募ること

まぁ、何だか持ち上げてばかりいるようになってしまいますが、僕は「MOTOWN」のベリー・ゴーディに匹敵するくらい、この日本の時代を切り拓いた、そんな人物かと思っています。

映画「MAKING OF MOTOWN」を観たすぐあと、岸本社長に電話しましたもん。

「この映画、今の社長、絶対観た方がいいです!メモリアルブック制作をする今なら尚更です!」って(笑)。

45年の歴史を一冊の本にする。

そしてそれは岸本社長の自画自賛物語ではなく、ライブハウスを作って来た方々との対談であったり、ライブハウスに出演して来た様々なアーティストの方々の思い出寄稿やライブハウスと共に生きて来たイベンターさんやメディアの方々の証言。

これは貴重な仕事となるように思っていますし、1人でも多くの「音楽ファン」の方々に手に取って欲しいものとなるように思います。

この「メモリアルブック」は、過去の歴史をまとめ上げ、そしてコロナ以後の未来へと繋ぐ、、、今回のクラウドファンディングの目玉となるでしょう。

そして「メモリアルCDボックス(デジタル音源付き)」。

こちらは権利関係などの都合もあり、有名なアーティストの皆さんの音楽を収録することは難しいのですが、ライブハウスで歌われいた、鳴らされていた、まさに「ライブハウスの音楽」を100曲以上、収録することが決定しています。

「我々らしく支援を募ること」をテーマに考えたクラウドファンディング。

この2つが核となり、他には各ライブハウスに掲載できる「ネームプレート」などもあります。

「HELP」だけじゃなく、我々が感じる「お宝」をぜひ、お求めいただきたいです。

芽生える “勝ちたい気持ち”

公開を前に、ひどく緊張しています。そして「メモリアルブック」や「メモリアルCDボックス」に取り組めることにワクワクもしています。

今現在のライブハウスでのイベントブッキングはかなり苦戦していますし、非常にナーバスになることもあります。

このまま未来に、ライブハウスを繋いでいけるのか、心配にもなりますし、心が折れそうになることもあります。

でも、負けられない。

でも、「負けられない」だけじゃなく、「勝ちたい」と思っている気持ちもあるんです。

出演者として、裏方として、「ライブハウス」を愛して来た1人として、アームエンタープライズがアーティストの方々と作り上げて来た日々を、そして成し遂げて来たあらゆることを、一度ここに、据えてみたい。

裏方としてライブハウスを生きて来た岸本社長との仕事で南出はいろんな変化をして来たと思います。

ミュージシャンとして生きていくことは諦めたけれど、神戸VARIT.を根城にして生きていること。

感謝しています。

ライブハウスの未来をつなぐご支援を|45年間の歴史を一冊に
https://readyfor.jp/projects/arm

南出 渉 (VARIT. / アームテックパブリシャーズ) さんの過去の記事