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LIFE STYLE

“初老”人と海

LIFE STYLE

過日の夜、海に住む獰猛な魚、スズキ(ルアーマンは “シーバス” と呼ぶ)を狙いに友人と某海辺へと出かけた。 昼間でも釣れないことはないが夜になると活性が上がる魚なので友人とその日の潮の具合と時間帯を検討して、いざ出陣となった。

スズキ(以下シーバス)はいわゆる出世魚と言うやつで大きさで呼び名が変わる。

関西では、
30cm〜40cm → セイゴ
40cm〜60cm → ハネ
60cm〜80cm → スズキ
80cm以上になると
“モンスター” と呼ばれる。笑

僕も実際釣ったわけではないが、真夏の昼間に橋桁の影に1mぐらいのモンスターが水面に悠然と浮かんでいるのを間近で目撃したことがある。

・・・

さて友人のクルマの迎えが来る迄にあらかじめ準備していたタックルの再確認をする。
抑えきれぬ興奮とともに。

僕たちは活き餌ではなく、いわゆる “ルアー” と呼ばれる疑似餌を使ってシーバスを狙う。

主にシーバスが捕食している小魚を模した形のものを使う。
これにも様々な種類があって、状況に応じて使い分ける。

友人が迎えにきた。
車内ではお茶を口にしたり
煙草を吸ったり
たわいもない話で過ごすが
二人ともアタマの中は今日の作戦思案と、過去のデータ整理でフル回転しているのがお互いにわかる。笑

そうこうして現場到着。
先行者はいないのでポイントは選び放題だ。

時折、水面を小魚が逃げ惑う音で耳が一瞬にして鋭くなり、狩猟本能の血がゆるやかに騒ぎ出す。

「いる。 今夜は奴らが餌を追って、我が物顔で湾内を泳いでいる。」

急いでルアーをセットし、キャストする。
このボイルが立った僅かな時合いを逃すわけにはいかない。
ところがこのシーバスという魚、非常に警戒心も強く、ルアーの選択やアクションの具合ですぐニセモノと見切る。

追っている小魚の大きさや種類を考慮してルアーをチョイスしなければならない。
これを「マッチ ザ ベイト」と呼ぶ。

この夜は間違いなく、イワシを追っている。
それも相当大きなイワシだ。

友人がそのイワシを器用にもルアーで引っ掛け、大きさを確認する。
20cmはある、マイワシだ。
こんなデカいイワシを追い回すなんて相当デカいシーバス、もしくは「青物」と呼ばれる、ブリなどの一連の仲間であるに違いない。

しかし、20cm近いルアーなんて持っていない。。。
持っている中で一番大きなルアーをセットする。
それでも13cmしかない。
悲しいかなこれも見切られる原因となる。

それでも数度キャストを続けていく。

 

その時だった。

 

ガツンと音がするようなバイト!

 

かかった!!

 

全身の血が逆流する。
リールのドラグが唸りを上げる。

 

シーバスという魚、食いついた泳層をまず水平に走る。
そして一気に底へ向かって潜る。
ここがなんとも知恵の利く魚で、釣り人の糸のテンションを利用して、その後水面に向かってジャンプし、頭を激しく振るための “助走” なのだ。
これがいわゆる「エラ洗い」と呼ばれる、この種族独特の行為で、口にかかった針を外すための一連の動作である。

 

真っ赤なエラが闇夜にはっきり見えた。

デカい。。。。。

片方の手でロッドを操り、もう片方の手でランディングネットを仕度する。

ロッドが根本から絞られる。。。

魚の体が水面で激しく翻る。。。

胴の幅が20cmはある。明らかに70cmオーバーだ!

「頼む、、、もういいかげん観念してくれ。。。。」

しかし相手は命懸けだ。こっちの都合なんか知ったことじゃない。

最後のエラ洗いでルアーはそいつの口から外れてしまった。。。。。

僕はその場で膝から落ちてアタマの中は真っ白になった。

釣り上げていればシーバス自己更新記録モノだったはず。。。

 

・・・

釣り人のハナシは半分で聞いていれば良いとよく言われるが、「逃がした魚は “マジで” 大きい。」こともごくたまにあるのだ。笑