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居の二〜打の三:『自分でやってみよう!@90年代。能動的DIYのあの頃』『カタログから見るカホン~日本伝来~』/ 打と居と魚

MUSIC, LIFE STYLE

『打と居と魚』
パーカッショニスト木村和人による寄稿は、
・パーカッショニスト目線の「打・カテゴリ」
・DIY関連の「居・カテゴリ」
・アクアリウム関連の「魚・カテゴリ」
以上、三つのテーマでお届けしております。

前回予告の通り今回は…、

居の二:『自分でやってみよう!@90年代。能動的DIYのあの頃』

私が初めて手にした楽器は…ボンゴ!
サイズといい価格帯といい、手を出しやすい楽器です。

時は、1994~1995へと変わる冬のこと。

続いて、コンガ!!
大学院の2年目は、アルバイトで貯めた学費を使い込んでしまい、エライコッチャのろくでなしであります。

そして、ジャンベ!!
(現在の呼称はジェンベ。綴りがDjembeなので、当然と言えば当然ですが、少なくとも90年代から暫くは『ジャンベ』ってみんな言ってたし、その前は『ジンベ』という呼称もあったはずですよ!!)

ほんでからに、カホン!!

これらの間に、振りもの、擦りもの等、小物楽器がちょこちょこ増えていくわけですが、何はともあれ、ジェンベとカホンがエライコッチャだったのです。

ジェンベは皮を張り替える為に、毛皮の状態で購入してきて、水で戻して・・・当時学生と偽って住んでいた(6畳一間・バス&トイレ&キッチン無し)寮の一室を、獣臭満タンにして、毛を剃り、皮を削り、終わりなき〆縄作業に勤しんだものです。

一方カホンは…というと、あれやこれやと、20台?ほどは自分で作ったものを演奏して来ました。

まさに現在も製作中なのですが、90年代当時から「買う」という発想がありませんでした。

というのも、私の師匠・中村岳氏が、カホンの出自たるアフロ・ペルー音楽やフラメンコ「以外の」様々な音楽ジャンルでもカホンを演奏するという…現在では当たり前となった事を、誰よりも先駆的に始めておられたのです。

そして、そのカホンは師匠自ら手掛けたものでありました。

これは…自分で作らない理由がありません。
人が何かを学ぶ時、それは、往々にして模倣から始まるものです。

 

現在のDIYにおけるモチベーションは「仕方なく(『居の1』をご参照ください)」ですが、当時はそうではかった。

・この楽器は一体なんなのか!?
・この作業は一体なんじゃ!?

…といった、好奇心と探究心と若さからの、能動的DIYだったのであります。

そんなわけで、

居の二:『自分でやってみよう!@90年代。能動的DIYのあの頃』は、

早くも結論!お題回収!!であります。

 

……ん?…でも、
…そういや…、カホン。

買うにしても、今みたいに楽器屋さんに溢れてなかったよね…。
日本では、シュラグベルグというドイツのメーカーのものが売られていた記憶しかない…。

どれ、当時のカタログを見てみますか…。

 

…からの!!!

打の三:『カタログから見るカホン~日本伝来~』

…と言っても、年代ごとに全てのパーカッションカタログが残っているはずもなく、歯抜けからのレポートではありますが、それでも面白いです。

先述しました通り、当時はシュラグベルグschlagwerk社製品の独壇場であったという記憶を独断して、紋切り型満載で参ります。

さて、取り出しましたるコマキ通商(海外製品の輸入卸)さんのカタログ89~90年版と、91年~92年版であります。

89~90年版(左)には、カホンの姿も文字も見られませんので、まだ日本に伝来していません。

90~91年版は…、おお!なにやら細長い木の箱が新たにラインナップ&画像拡大~!!

全部打面は上っぽいけど…一個だけカホンが写り込んでますやん!
ほぼ影やけど!!

商品説明的には…、

商品名は「ウッド・ドラム」ということでまとめられてます。
でも、商品番号の頭文字(DC-4002)が、シュラグベルク的には「ウッド・ドラム」ではなかったことを物語ってはおりませぬか???

それはさておき、仕様の項目が要注目なわけですが、『カジョン』!!

しかも、高さ40、幅25、奥行き20センチですから、大分ちっさい。

しかも、しかも、「ボンゴやジャンベの様に使います」とな!?
(ほら、この当時の呼称は『ジャンベ』)

ボンゴとジェンベの奏法は全く異なるし、一体どう演奏するのか??まさに黎明期!!

ということで、既製品カホンの日本伝来は、

『カジョン』として1991年に!!
と言う事で結審!

 

それでは、その後の流れを追いましょう。

93~94年のカタログです↓

「ボンゴやジャンベの様に使います」の意味が明らかになります。

股に挟むんかいな。それで小さいのね。キューバン・スタイルですね?

…て! その横!!
ペルー・スタイル来た!!

よって…、新展開。

ペルー式カホンの伝来は1993!!

で、ちっこいやつの名前と品番はそのまま「カジョン DC-4002」。
新たに輸入され出したペルー式は、「カジョン・ラ・ペルー CP4005」。

しかし、いずれも日本においては「ウッド・ドラム」が商品名の様ですね。

…痛恨の95年版無し…

気を取り直して、96年版!!

急に装丁がしょぼくなりましたね。。。

しかし、おお!

ついに「ウッド・ドラム」から独立!!
名称『カホン』もゲット!!!!

よって、既製品における「カホン」という名称(ていうか、発音上の問題なわけですけど)の獲得は1996年(か1995年)!!

 

時は流れて…、

 

時は流れて、急に2002年!!(単なる未所持でっけど)

カタログはカラーに戻ってますね。

ラインナップが増えましたね~。商品説明@うんちくもプラスされ…、

おぉ!

「ボンゴやジャンベの様に使います」という説明とともに91年に彗星の如く日本に現れた「ウッド・ドラムの一つ、カジョン」であったDC-4002(ややこしい!)が、カホン “コンパルサ” という名前で生き残っとります!

カホンの既製品としては、初めて日本に伝来したDC-4002(ちなみに現在もラインナップされてます!)が、発音間違いと「キューバ式か?ペルー式か?」の狭間で彷徨いながらも生き残ったと言うことは、なんとも面白い。

その上位カテゴリとされていた「ウッド・ドラム」は姿を消してますからね。

 

さて、なし崩し的に始まった、本日無理矢理の2投目『カタログから見るカホン~日本伝来~』を綴ってまいりました。

その変遷には「発音間違いによる呼称の混乱」というバックテーマが常に流れていた様に思えます。

カジョン→カホン、ジャンベ→ジェンベもそうですが、90年代は「シュラグベルグ」と日本で呼ばれていたブランド名も、2000年代には『シュラグベルク』と、正しい発音で日本語表記されています。

書き始めは、これらを発音違い案件としてニヤニヤ…から始まってしまった感があるのですが、情報がない時代に、情報がないものを輸入・販売、それから購入する側も、強烈にエキサイティングだっただろうな~、とロマンを感じた次第です。

転じて?
個人の卑近な「知識・常識」って、時に邪魔だよね…って感じです。

ではまた次回、お会いしましょう!