日本画家:木村了子 − 現代美男子画の巨匠
現代美男子画の巨匠
今回ご紹介させて頂くのは、日本画家の木村了子さん。
彼女は現代美男子画の巨匠と呼ばれており、女性をモチーフにした美人画ではなく、男性をモチーフの対象にしたイケメン画を描いている。
最近では、久しぶりに女性を描いたという、坂本冬美さんのニューシングル「ブッタのように私は死んだ」のジャケットを手掛けており、寺院とのコラボ製作や映画美術など幅広いジャンルで活躍されている。
日本画とは
ここで少し日本画について。
日本画とは明治以降に、西洋から伝えられた油彩画と区別するために生まれたもの。日本画と洋画の違いは大きく分けると、描くために使用する素材の違いである。
日本画は一般的に紙や絹、木、漆喰などに、墨、岩絵具、胡粉、染料などの天然絵具を用い、膠(にかわ)を接着材として描く技法が用いられている。
“日本画” の呼称が一般的になるのは、明治20年代から30年代にかけてと言われており、それ以前では日本画という概念は無く、近世以来、伝統絵画としての狩野派、円山・四条派、やまと絵などの流派に分かれていた。
日本画の技法で描くイケメン画
〜 モチーフを男性にすること
彼女は日本画を独学で学び、狩野派が口伝で広めた知識を本にしたものを読み漁るなどし、日本画についての知識を深める。
彼女が現在日本画家として活動するきっかけとなったのは、日本初の裸婦モデル・お葉をめぐる物語「およう」という映画の中で、襖絵を描いたことが始まりだそうだが、彼女の数々の作品の中で、特に印象づけるのは “イケメン画” である。
もともと人物画を描くことは好きだったらしいが、人物を描いていく中で、なぜ女性ばかりがモチーフの対象として当たり前なのかということに疑問をもち始める。
男性は女性の丸み帯びた美しいとされるシルエットではないが、男性ならではの筋肉の美しさがある。
モチーフを男性にすることは、彼女自身が女性である為、異性として興味をもつことができ、自己投影をする必要がなく、清々しいほどの楽しさに気付いたそう。
私自身も具象の人物をモチーフに制作している為、非常に共感できる。確かに作家が具象で同性のモチーフを制作し発表した場合、多くの鑑賞者の方に作者と作品は同一視され、これはあなたなの?などと聞かれる事は多い。
必ずしも作品のモチーフ全てが作者自身なわけではない。
彼女は伝統的な日本画の技法で男性をモチーフにイケメン画を描いていくことによって、モチーフのジェンダーバランスに対しても働きかけているように感じる。
衝撃的だったイケメン仏画
そしてイケメン像の中でも、特に目を引くのが、仏様をイケメンの仏像として表現された作品である。
私自身初めて展示会で作品を見たときは衝撃的だった。
神聖な仏像の姿を素晴らしく現代的に、美しく魅力的に描きあげている作品の数々。
今まで誰もこの様に表現する作家は居なかったように思う。
その展示会で、イケメン画の抱き枕がグッズとして販売され即完売だったそうだが、イケメン仏画でもどうか再販して欲しい…。笑
進化する日本画文化
時代と共に、掛け軸などの日本画が飾られる床の間自体が無くなり、屏風絵もどんどん無くなっていっている。
年々と、日本画というものが身近なものに感じにくくなるが、彼女の斬新な切り口で描かれた日本画は、若い世代にも馴染みやすく、国内だけでなく海外のファンも多い。
日本画の文化は変化をしつつもこのように進化しながら次世代へと継承されていくのだろう。
・・・
今回彼女について書かせてもらったことで、 “日本画” という素晴らしい日本の文化を一人でも多くの人に興味関心をもってもらえたら嬉しい。
木村了子(きむら・りょうこ)
現代東洋の美しい男性(イケメン)をモチーフとした屏風絵や掛軸などの絵画作品を発表。伝統的な日本画の技法や絵画のスタイルを継承しつつ、異性であり愛の対象である「男性」を時にはエロティックに、時にはコミカルに様々なテーマで描き出す。王子様や人魚、ターザンやカウボーイなどファンタジックな男性像が織り成す作品郡は、過去と現在、和と洋が絶妙に交差する独特の画風を形成。絵画制作ほかフィギュア作品や、映画美術への参加など、幅広い分野で活動。(*HPプロフィールより)
木村了子|Ryoko Kimura Art works
http://ryokokimura.com
【個展情報】
10月22〜11月13日 @ Dub Gallery Akihabara
*ほか、島根県立石見美術館と埼玉県立近代美術館で準備中の「美男」をテーマにした展覧会に参加予定。