「沖野好洋氏と語らうブラジリアンミュージック “縁側” 対談 ④」− 沖野好洋×松田光司 −
いよいよ最終章です!
KYOTO JAZZ MASSIVE / ESPECIAL RECORDS の沖野好洋氏と私、松田光司の “ブラジリアン・ミュージックとその出会い” についてをお送りしたいと思います。
是非、最後までご一読ください!!
(前回記事はこちら ▼)
③からの続き・・・
松田: そういえば最近、FAR OUT RECORDINGS や MR BONGO 等から物凄くレアなタイトルの再発が増えてる様に思うんですけど、その背景って何なんでしょうか??
沖野: どうなんでしょうね。 以前からレア・ブラジリアンの再発は結構あるんですけど最近は少し多くなりましたね。 あえて背景と言うならばブラジル・オリジナル盤の異常な高騰があるのかなとは思いますね。 もう僕達が若い頃に買ってた値段の2倍から物によっては10倍もするのもありますしね。 それこそオリジナル盤に関しては10万円単位のレコードが平気で市場に出てたりしてますしね。
松田: もう買えないですよ。。。苦笑
沖野: だからそこにニーズがある訳で、さらにニュー・ディスカバリーなんかも出てたりしてますし。笑
松田: ですよねー。まだこんなのがあったのかと!笑
沖野: 昔と違って今は再発が出てもオリジナル盤の値段が下がらないんですよね。
松田: あー、、、なるほど。
沖野: 逆にオリジナル・ブラジル盤のコンディションの良いモノを探すのって至難の技ですし、それなら再発でもいいから聴きたいって人も多いと思うんですよ。 僕も最初はあんなに苦労して探して高い金額出して買ったのに、あっさり再発されるともうショックですよね。 もう慣れましたけど。笑
松田: わかりますわー 笑
沖野: レコード屋としては、売上にも繋がるんで嬉しいですけど。笑
松田: 昔のブート盤なんかと違って正規再発は音もジャケットもしっかり良いですし。 しかしどうしてまたブラジル盤が急に高騰し出したんでしょうかね??
沖野: まず、当時のブラジル盤って圧倒的にプレス数が少ないんですよ。 加えてコンディションの良いのも少ないですし。 またそれ相当の年月も経って骨董的価値もあると思うんです。
松田: 確かにDJだけじゃなく、ブラジル音源の熱狂的コレクターもいますからね。
沖野: 今それってブラジルに限らず、一部のジャズなんかでもそうなんですよ。 例えば ファラオ・サンダース とか、この1、2年で倍の値段になってますからw
松田: えっ!?
沖野: ホントですよw
松田: 持っててよかった。。。w
沖野: とにかく今、アナログの中古市場はかなり高騰してますね。
松田: ブラジリアン・ブギーとかにその辺が顕著な気がしますけど。。。
沖野: 昔は「ブラジルのディスコかぁ・・・」みたいな若干の偏見というか距離があったんですけどね、今聴くと「これこんな良かったんや」みたいな発見もありますし、新しいフォーカスが当たるのも面白いなぁと。 実際僕、ブラジリアン・ブギー再評価の時、実家に発掘に行きましたよ ww 「あ! やっぱり持ってたやん!」ってww
松田: あははははwww
沖野: 若かりし頃に色々買い漁ったり、チャレンジで買ってみたりした中にあるんですよね。 例えば リンカン・オリヴェッティ とか自分では忘れてるだけで買ってたりしてるんですよww あと、エドゥ・パソ と ギィ・タヴァレス のとかw あれが FAR OUT RECORDINGS から再発された時、「あれ? 僕これ持ってたんちゃうかな?」って、探しにいったら出てきたんですよw 『10£』ってシールが貼ってあるままでww
松田: 爆笑!
沖野: でも今聴くといいんですよね。「あー、何で当時これスルーしてたんやろ」って思うぐらい。
松田: ホントいいですよね。 あのテイスト大好物です。
沖野: まあ値段はさておき、そういう音楽が再評価されるのはとてもいいことですよね。
松田: いいことですね。 僕もありがたいw
沖野: で、うちの店ってしばらく新譜中心の業務に追われ続けてたんで、中古盤はウェブ通販やってなかったんですけど、去年から中古盤もウェブで紹介していこうかなと始めたんです。 そのきっかけが、最近我々の現場ってバー・スタイルでしかもアナログ縛りって割と多いじゃないですか?
松田: そうですね。リクエストありますね。
沖野: そういう現場でDJしてたら「これって昔、沖野さんのカセットテープに入ってた曲ですよね?」とか言われて、それこそ何十年も前に作ったテープなんで「あ、入れてたっけ?」って自分でもよく覚えて無かったりして、、 でもお客さんが「これもう長年探してるけどないんですよ…。」 で、「えっ!? 探してるの?? 今店にあるよ」なんて事もあったんですよ。
それで去年、京都の『Hachi』っていうバーでブラジルのアナログオンリーイヴェントを開催した際に、やっぱりそんな声が聞こえてくるんですよ。 レコードかけながらジャケットも公開してレア盤から何から全て出し惜しみ無しでやってたんで。 その時の反応をみて、店に来れない子達に僕がお薦めするブラジル中古盤のニーズってまだまだあったんだなと今更気づきまして。笑
松田: 行きたかったなぁ。。。
沖野: 松田さん、来れなかったんですよね?
松田: そうなんですよ、諸事情でw
沖野: しばらく新譜のレコメンドに軸足を置いてたんですけど、「ちょっとまた中古盤もがんばってウェブで紹介してみようかな」ってなったんです。 現在は、ほぼ毎週中古盤のウェブ更新もやってるので興味ある方は是非チェックしてみて下さい。 ブラジル盤も定番商品中心ですが定期的に紹介してますので。
OFFICIAL BLOG|Especial Records
https://www.especial-records.com/blog-top
松田: 最後になりますけど、好洋さんって実際にブラジルに行った事あるんでしたよね??
沖野: ありますよ。
松田: 買い付けにですか??
沖野: そうなんです。
松田: 羨ましい…。何かその時のエピソードとかあります??
沖野: あれは確か ESPECIAL RECORDS を始めた翌年の1999年だったと思うんですが、ちょうど、前出の ジョー・デイヴィス がブラジルに滞在してるというんで現地で合流して買い付けに行ったんです。 リオとサンパウロの二都市でした。 買い付けと言いつつもビーチ行ったりコルコバード見にいったり半分観光でしたけど。笑
凄い楽しい買い付け旅行で、色んなエピソードやトラブルもあったんですが、一つだけ気になったのが当時ブラジルの街を歩いていてもブラジル音楽全く耳にしなかったんですよね。 ドラムンベース全盛期でどの店に行ってもドラムンベースかポルトガル語のヒップホップがBGMでびっくりしました。笑
ただ、ちょうどリオに滞在してる時に マルコス・ヴァーリ のライヴがあったんですよ。 ジョー・デイヴィスは彼の作品リリースしていたのでライブに連れて行ってくれたんです。
現地のブラジルで大好きなマルコス・ヴァーリのライヴが観れて感無量でした。
で、帰り道の話なんですが、僕らはイパネマビーチに泊まってたんですけどちょっと離れた会場だったんでライヴの帰りにタクシーに乗ったんです。 そしたらタクシードライバーが「君らどこへ遊びに行ってたんだい?」って聞いてきたんでジョーが「マルコス・ヴァーリのライヴを観てきた。」って言ったら、「マルコス・ヴァーリ?? 懐かしいなぁ!」って。
そのドライバーが結構初老の人で、我々みたいな世代がマルコス・ヴァーリとか古いブラジルのアーティストを聴いてるというのが意外だったみたいで、そのドライバーさんにしてみたらまあ日本で言う演歌とか古いポップスとかを若者が聴いてる様な感覚なんでしょうか、えらく驚いてて「じゃあ、他にはどんなの聴いてる?」とも聞かれて「 ミルトン・ナシメント とかですかねぇ」と答えたんです。「えっ! ミルトン・ナシメント!!!!!! うわぁ、、、昔好きでよく聴いたよ!!」って。すると、そのドライバーのおじいさんが突然ミルトン・ナシメントの『Tudo o que você podia ser』をアカペラで歌い出したんですよww
僕、長年ブラジル音楽聴いてますけど、今でも一番大好きな曲なんでびっくりしました。
(▼ Milton Nascimento – Tudo o que você podia ser)
真夏の夜のイパネマビーチを、クーラーのないタクシーの窓全開にして、ドライバーのおじいさんが決して上手くはないけど朗々と歌う 『Tudo o que você podia ser』を聴いて走ってると、「あぁ、、俺今ブラジルにいるんやなぁ…。」って思いましたね。
その光景は今も忘れられない一番のブラジルでの思い出です。
松田: うわぁ、ええ話ですねぇ、、、僕も死ぬまでには一回はブラジル行ってみたいですw
沖野: 是非。笑
松田: という訳で今日は色々貴重なお話を聞かせていただいてありがとうございました。 取材ご協力に感謝いたします!
沖野: いえいえ!
ーーーー という訳で、4部に渡った対談 / インタビュー、いかがだったでしょうか??
この記事でブラジル音楽に興味を持っていただけたら幸いです。
ちなみに沖野好洋氏のブラジルミックスのリンクを上げておきますので、「この曲、気になる!」と思われたら一度、ESPECIAL RECORDS に沖野氏を訪ねてみてはいかがでしょうか??
“KYOTO BRAZILIAN MUSIC CONFERENCE” 2020.09.13 Live DJ Mixed by Yoshihiro Okino (Kyoto Jazz Massive)
ESPECIAL RECORDS
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