コロナ規制緩和へ 〜 アラブヴァイオリン / From Occident to Orient vol.10
コロナ規制緩和へ
ようやく春が来たと思ったベルリンですが、5月に入ってもなお、寒い日が多いです。 僕がベルリンに来た2017年は5月ですら結構寒い日が多かった印象ですが、その年と今年の天気はとても似ているように感じます。 暖かい日と寒い日の温度差、また日によっては1日の温度差ですら激しく、着る服が難しいです(笑)
長らくロックダウンが続いていたドイツですが、ワクチン摂取が進み、ようやく規制も緩くなってきて徐々にコンサートもできるようになってきました。 僕もありがたいことに6月以降のコンサートも徐々に増えてきています。 どこまで元に戻るかはわかりませんが、ようやく希望が見えてきました。
現在、街のいたるところに簡易キットによる検査場があります。 規制が緩くなり、営業を再開した小売店等へ行く時や、テラス席ながらレストランやカフェで食事をする時など、陰性証明が求められる際に検査しに行き、その陰性証明を持っていくと入店が可能となっています。 検査場は主にバーや劇場など未だに閉まっている店を間借りしたり路上などで行われていて、場所によってはたくさんの人が検査を受けに来られています。 20分程度で結果が出るので、証明書は直接書類をもらうかPDFとして添付メールを送ってもらえます。
冒頭では寒い日も多いと書きましたが、実際は暖かい日ももちろん多くなってきているので、規制が緩くなってきたことも加えて、多くの人が外での飲食を楽しんでおられます。 皆さん本当に待ち望んでいたと思います。 僕もです! カフェやレストランのテラス席は多くの人で賑わい、公園等も一層人が増えてきたように思います。 多くの人で賑わう人気スポット、マウアーパークという公園やノイケルン、クロイツベルク地区にまたがる川沿いの写真を撮ってみました。
アラブヴァイオリン
さて、今日はヴァイオリンについてご紹介したいと思いますが、ヴァイオリンというと読者の皆さんは主にクラシックで弾かれる花形楽器の一つというイメージを持たれてる方が多いかもしれません。 このヴァイオリンという楽器は非常に優れた楽器の一つで、現代においては実はかなり多くの音楽で弾かれています。
クラシック以外ですと、ポップスやジャズなどの大衆音楽でもよく使われていて、さらにワールドミュージックに素養のある方ですと、アイリッシュで使われるフィドルを思い浮かぶ方も多いと思います。
ヴァイオリンは、フレットと呼ばれるギターなどで特定の音を正確に出すために指板に貼られている部品がないので、正確な音を出すのが難しいのですが、フレットがないということは逆にもっと自由に音を出すことができるということでもあります。 即ち微分音が出せるということです。 それは微分音が使われるアラブ音楽の演奏も可能ということになります。
というわけで、今回はアラブ音楽の世界、特にエジプトからシリアにかけての東地中海エリアで弾かれる “アラブヴァイオリン(アラビア語ではカマンジャやカマン、またエジプト方言ではカマンガと呼ばれます)” を紹介したいと思います。 一口にアラブ世界といってもエリアが広く、モロッコの方へ行くとまた特殊な弾かれ方をされていますが、その辺りもいずれまた紹介できたらと思います。
アラブ世界にはもともとラバーバやカマンジャといった膝や床などに立てて弾く擦弦楽器がありました。 楽器の発祥を辿るとだいたいペルシア(現代のイラン近辺)に行き着くことになると思いますが、擦弦楽器についてもペルシアが発祥と言われていて、アラブ等その影響が強かったエリアでは膝に立てて弾かれていますが、ヨーロッパへ渡ってからは顎の辺りに添えて弾く現代のヴァイオリンへとやがて進化していきます。
現代のアラブ音楽では普通にヴァイオリンが弾かれていますが、これは19世紀頃にヨーロッパから逆輸入されるような形でヴァイオリンがやって来て、従来の擦弦楽器よりも便利で微分音も演奏可能ということで、アラブ音楽との相性も非常に良かったために結果的に定着して重要な楽器の一つとなりました。
楽器としては基本的には同じですが、クラシックと違う点はチューニング(西洋式で弾く奏者もいます)と、微分音を出したり弦を押さえている指をスライドさせて曲線的な音を使ったりするような、フレットレスを活かした奏法がよく使われるといったところです。
最後にアラブのレジェンドヴァイオリニストを紹介して今回は締めたいと思います。
サミ・シャウワ
まずはエジプトで19世紀末に生まれ活躍したシリア人ヴァイオリニストで “ヴァイオリンのプリンス” とも呼ばれるアラブヴァイオリンのパイオニア、サミ・シャウワ です。 下記は動画ではなく古い録音ですが、本人の即興演奏です。
アブド・アブデル・アル
次に紹介するのはパレスチナ系レバノン人のこちらも20世紀に活躍した アブド・アブデル・アル です。 即興からウンム・クルスームの名曲ダレット・エル・アヤームへと続いていきます。
アブドゥ・ダーゲル
最後に紹介するのはエジプトのヴァイオリニストで日本の奏者の大半が師事されてる アブドゥ・ダーゲル です。 ウンム・クルスームの楽団のメンバーであり、楽曲も非常に独特でおもしろいです。 僕自身もいつかお会いしたい奏者の1人でしたが、残念ながら今年の5月10日に永眠されました。 ご冥福をお祈りします。
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いかがでしたでしょうか?
同じ楽器でもところ変わると新たな魅力が引き出され違う楽器のようにも感じられとても新鮮なサウンドに感じられると思います。
ヴァイオリンを弾かれる方もこれから始めたい方も是非アラブ音楽にもチャレンジしてみてください。