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「音談るつぼ」#7 続・ジャズ研飲みで、私と。

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仲間と音楽談義をしつつ、お酒を酌み交わすなんてこともできにくいコロナ禍の昨今。 じゃぁせめて気分だけでもってことで、「ジャズ研の学生が、だらだら飲みながらしそうなジャズの雑談」を今回もお届けします。 ぜひ、ゆるっとお酒やお茶を片手にどうぞ。 私も呑みます。

「聴け」っていうけど、どう聴くんだ?

ジャズ研に入部するからといって、新入生が最初からジャズに詳しいわけじゃない。 たいていはスタンダード曲にも疎い。 むしろ「スタンダードってなんですか?」と言いかねない。 私は言ってました。 私の繰り出す素朴すぎる質問に、先輩方はいつもちゃんと答えてくれたけど、たいていの場合、最後はこう言うのだ。

「まぁなんだ、いろんなジャズを聴け」

どうやらジャズは、聴けばわかるものらしい。 ただ、「聴き方」までは教えてくれないんだなぁ。 そこが一番の問題なのに。 いくらヒントがあると言われても、見つけ方も(場合によっては正体も)わからぬヒントは探しようがない。 結局、たくさんの音源を聴くには聴いたが、当時の私はしょうもない聴き方で、いらんことばかり見つけていた。

例えば、ジョン・コルトレーン の名盤「BLUE TRAIN」。 ここに収められたコルトレーンのソロが、一瞬「ドラえもん」の曲っぽいのをご存じでしょうか。 いや、ほんとですって。 日本人なら「♪こんなこといいな♪」と聴こえちゃって、「あ! ドラえもん!」と素に戻っちゃうこと請け合いだ。

比較用にキーを揃えて表記してみました。 符割りが違うが、構成音は同じ。 私の耳にはどうしても「ドラえもん」だ。 コルトレーンが「ドラえもん」を吹いてるぞ(吹いてない)と思うだけで、ミスマッチすぎてニヤける。

 

・・・・てなことを書くために、久しぶりに「BLUE TRAIN」を聴いた。 いやぁ、コルトレーンのゴリゴリっぷりが鮮烈だ。 こんなに格好良かったっけ。 勢いで吹いているようで、コードや理論に則った整然としたフレーズ。 一方で「人と同じことはしないぜ」といった気概も感じられるのが気持ちいい。 あと音数が多い。 もう、めちゃくちゃ多い。 どのくらい音が多いかビジュアル化したくなり、「ドラえもん」フレーズ登場直前の、ソロ5コーラス目から採譜してみた。

楽譜作成ソフトを使いこなせず手書きのままで失礼するのですが、そして間違ってるところもあると思うのですが、とにかく譜面になると音数の多さが一目瞭然かと思う。 とくに青色で囲んだ小節などは、これでもかと細かな3連符(たぶん)が叩き込まれており、1小節にそれぞれ20個、19個もの音が使われるほど、音がぎっしりだ。

我らが「ドラえもん」フレーズは、そんなぎっしりの後にやってくる(赤色アミ)。「ドラえもん」と次の小節(赤色囲み)に注目すると、音数は1小節あたり、ぎっしりピーク時の5分の1以下にまで激減。 なによりメロディがキャッチーで聴きやすいため、いい意味で目立つ登場の仕方だ。 ジャズ界隈にいると「ソロのストーリー」という言葉を聞くことがありますが、まさにソレ。「ドラえもん」フレーズはソロ中のサウンドの景色をガラリと変えて仕切り直し、新たなストーリーを生み出す役目をしていたんだなぁ。

 

結局、今も「ジャズの聴き方」はわからないままです。 でもジャズを聴いて、自分が感じていることを自分で汲み取って、何回も聴いて歌えるようになったり、格好良いと思った部分を採譜したりコピーしたりで咀嚼して、再度自分に落とし込んでいくのは楽しい。 尽きない。 みなさんはどんな聴き方をされているのでしょうか。 ジャズの何を聴き、どんなことを感じていらっしゃるのかしら。 よかったら教えてください。 そこからジャズ研飲みが始まります(笑)。

JOHN COLTRANE
BLUE TRAIN

1.BLUE TRAIN
2.MOMENT’S NOTICE
3.LOCOMOTION
4.I’M OLD FASHIONED
5.LAZY BIRD
6.BLUE TRAIN (ALTERNATE TAKE)
7.LAZY BIRD (ALTERNATE TAKE)

JOHN COLTRANE(ts)
LEE MORGAN(tp)
CURTIS FULLER(tb)
KENNY DREW(p)
PAUL CHAMBERS(b)
PHILLY JOE JONES(dr)

※「ドラえもん」フレーズは、6曲目の「BLUE TRAIN (ALTERNATE TAKE)」内、コルトレーンのソロ6コーラス目アタマに登場します。

絶対笑えると自信満々で友人に聴いてもらったところ、「うん、まあ」という曖昧な反応でした。 あれ? おかしいな。 ちょっと弱気になりました。 期待せずお聴きください。