映画レビュー ~「#ステイホーム再び」に、これみてどん底に落ちましょう編~
コロナウイルスが日常生活を一変した2020年。Go To施策も始まり、それまで通りまでとはいかないにしても、そろそろ以前に近しい生活への方向性が見えてきたかなというあたりで、いわゆる所の第三波。
そんなわけで、年末年始はGo To Travelも利用できず、文字通り、ステイホームな日々再び。
だがしかし、我々はまだ生きている。生きていたら、いつだって何かを始めることもできるし、それはなんだったらもう始まっているのだ!
というわけで、そんな日常に感謝の気持ちを持つべく、うんざりする映画を3つほどご紹介。はりきってどん底へ向かいましょう〜。
『凶悪』
『凶悪』
監督 白石和彌
製作 日本
2013年公開
人間は目の前の自分自身からいつだって逃げたいし自分を正当化したい生き物ですよね。なんつって。
ストーリー
ノンフィクション作品の映画化。ピエール瀧扮する死刑囚の告発をジャーナリストの山田孝之が、拘置所の面会で聞きながら、リリー・フランキー演じる真犯人「先生」を追い詰める。つー感じの内容を、お三方が熱演。
TOPICS
- これがノンフィクションってのがエグすぎるよね
- とりあえずお三方が熱演
- 人の凶気三部作
- 暴力の実行犯、須藤(ピエール瀧)
- 歪んだ精神、先生(リリー・フランキー)
- 自分からの逃避、藤井(山田孝之)
- 凶気の形は、角度を変えたら色んな姿をしているよね
- ピエール瀧の圧倒的な暴力
- リリー・フランキーの人の命をなんとも思わない笑顔
- 山田孝之の事件の真相究明に没頭するあまり家庭を顧みない姿
- 脇役のみなさんも素敵
個人的感想
ある日、なぜか朝っぱらから見て、1日ずーん、となったが、妙に気になって5回ぐらい見た作品。
簡単に暴力で人を殺すシーンはもちろんだが、人の苦しんでる様をにやにや、時々爆笑しながら見てるリリーフランキーの姿は、あまりに病的だが、犯罪に手を染める人ってこういうタガが外れた人よねと妙に納得してしまう。この作品のリリーフランキーとピエール瀧は、ほんま目が怖い。
そして、「事件の真相を暴く」という大義名分のために、妻に認知症の母の介護を押し付け家庭を顧みないジャーナリスト山田孝之の姿の方が、やたらにリアルで、犯罪ではないが、自分の日常にも重ねることができるリアルな現実逃避的狂気を感じることができて、三重に重たい。
最後の最後まで、映画を覆っているのは黒い緊張感。終わってからも体にまとわりついてきます。
『哭声 / コクソン』
『哭声 / コクソン』
監督 ナ・ホンジン
製作 韓国
2017年公開
混沌・混乱・疑惑
ストーリー
サスペンススリラーなストーリーに、悪霊的な超自然現象が自然に織り込まれ、幻覚なのかリアルの現象なのか、演出と役者さんの演技に呑み込まれているうちに終わってしまう。
ある田舎の平和な村に、あるよそ者が来てから、村人の中で、身内による虐殺事件が多発。主人公警官ジョングの娘にもその予兆である湿疹が見つかり、他人事だった事件が急に温度感を変えてジョングを襲う。娘を救うため、「よそ者」を追い、「祈祷師」の力を借り、「目撃者」から真相を見つけようとするが。。
TOPICS
- とりあえず映画全体を覆う嫌な暗さ
- 泥・汚れ・止まない雨
- 不信・裏切り・愛情
- 事件を追う立場から当事者になったジョングの温度感の落差
- オカルトよりのはずがそうならない演出
- 不明瞭な部分が多々あるものの、とりあえず嫌な悲しみだけが残る
- 「うわ、、、」ってなるラスト
- なんとなくだがキリスト教の信仰がモチーフにあるような
- イエスの復活とか
- みるもの次第で姿を変える、あるいは変わってみえる
- お前からは何に見える?と問われている気がします
個人的感想
前半は、まぁなんというか、謎の猟奇殺人を警官が追う、的な話ですが、姿を消す目撃者の女性や、よそ者の山奥での奇怪な行動から、見る側の頭に「?」が増えていく。
知らん間に、「多分こうなんちゃうかな」という思考で見るわけだが、裏切られる展開。
じゃあ、答えなんなのかといえば、結局誰が犯人で、悪霊が原因だったとして、誰が悪霊だったのか。不明瞭なまま、エンディングを迎える。
と、だけ書けば、なんやよーわからん映画で終わるわけだが、作品として、音楽、演技、演出が全て、練り上げられていて、特に、子役の女の子はキレッキレ。
よそ者役の國村隼さんは、最初から最後まで、登場した瞬間から空気が変わって、何しでかすかわからん感じが素晴らしい。
で、回収されたようなされていないようなストーリーの中、悲しみだけが残って終わります。
『悪の法則』
『悪の法則』
監督 リドリー・スコット
製作 アメリカ
2013年公開
大して金なくても真面目に生きてればだいたい幸せですよね
ストーリー
イケメン弁護士のあんちゃんが、べっぴんさんのフィアンセとハッピーに過ごしていたのに、ちょっとした出来心で裏社会ビジネスに手を染めてしまう。
「これ、やばいんちゃうけ、、」と、手を引こうと思った時は時既に遅し。本当に遅し。全て終わってしまっていたのでした。
ってあたりで、裏社会の力で次々消される関係者を役者さんのめっちゃ多いセリフからの描いたサスペンス。
TOPICS
- ブラッドピットにペネロペクルスにキャメロンディアスて著名人多数
- でも著名人にも容赦ない演出
- 殺人シーンよりその前後の描き方が恐怖
- 何の例え話かよーわからんけど、誰か死ぬんかな的描写多め
- 闇金うしじまくんばりに「普通万歳」と叫びたくなる
- リドリースコットはエイリアンだけやないんやで
- なんとなくスタイリッシュにまとめられてる感じがまた、怖い
- 惨殺シーン少な目ですが、裏で惨殺されてるんやろな的
- なんしかセリフめっちゃ多い
- 何かを隠喩しているのか伏線なのか脳みそぐるぐる
個人的感想
社会にはルールがあり、それを破るとその社会それぞれ相応の罰が下る。例えば、小学校で忘れ物をしたら、廊下に立たされるように。
小学校だったらそれで済むが、大人のマネーゲームで裏社会がステージだったらどうだろうか。一度足を突っ込んでしまったら、抜け出そうと思った時には、もう黒い水の底。
なんとなく、よくあるサスペンススリラーかしらと思いながら、冒頭はイケメンとかわいこちゃんの絡みをぼんやり見れるが、中盤からの加速度と、どうしようもない絶望感は、逆に心地よさすら感じる。そして、最後に残るのは、おまえかーい、という終わり方。
冒頭からラストまで、目と耳が離せなくなる要因として、会話シーンの多さがある。意味があるのかないのか、なんしかめっちゃセリフ多い。
この辺賛否両論ありそうですが、隠喩こみこみのある種冗長的な会話シーンは、次第にハマります。
リドリースコット監督は終わり方がええよね。もうちょっと教えてーさ、というむず痒さを残して終わります。
あとがき
三作品共通するのは、見る側への問いかけ「おまえはどーなん?」
答えはあるようでないし、人ごとと思っていたことが、身近で手を拱いているのは、日常生活のすぐそばという現実。戒めにもなるし、自己研鑽にも繋がる気がしないでもない。
何かを誰かに残すのが芸術作品の使命だとしたら、それはもう全うしてると思われる映画たち。
#ステイホームで家で一人でみようもんなら平和な日常万歳という気持ちになること必至。