様々な視点で情報を発信するカルチャーマガジン

  1. HOME
  2. CULTURE
  3. ベルリンの冬 〜 ウンム・クルスーム / From Occident to Orient vol.7
CULTURE

ベルリンの冬 〜 ウンム・クルスーム / From Occident to Orient vol.7

CULTURE, MUSIC

ベルリンの冬

年が明けてから寒い日が続いていたベルリンですが、最近は暖かい日も増えてきて春の訪れを感じています。 今年は本当に寒く、2月の半ばには連日雪が降ったり氷点下の日が続いたりしたため、湖や川がカチンコチンに凍っていました。 聞くところによると10年振りの寒さとか。 Facebookで友人のタイムラインを見るとたくさんの人が公園でソリやスキーを楽しんだり、凍った湖でスケートを楽しんでる様子がアップされていてほっこりしました。 残念ながら僕はソリやスケート靴などは持ってないので雪の中で遊べませんでしたが。。

僕が住んでる場所の近くに大きな川が流れているのですが、その川も見事に凍っていました。 珍しい光景ですし、折角なので写真に収めてみました。

またご近所さんの猫はよく外を散歩しているのですが、雪の中でも楽しそうに散歩してました。 猫は寒がりのイメージがありましたが、寒さに強い猫もいるのですね。

ウンム・クルスーム(Umm Kulthum)

さて、今回はエジプトのレジェンドで、アラブ世界を代表する歌手の1人、ウンム・クルスーム の楽曲をご紹介したいと思います。 はっきりした生年月日はわかっていないそうですが、20世紀初頭にイマーム(イスラームの指導者)の家庭に生まれた彼女は幼い頃からクルアーンの詠唱を父親から教わり、そこで培った歌唱力や才能がさまざまな人に認められて、1920年代にはカイロへ渡り、歌手としてのキャリアがスタートします。

20世紀のエジプトはアラブカルチャーの中心地であり、エジプトの映画や音楽などはエジプトに限らずアラブ世界全域で広く親しまれていました。 中でも1940年代から1970年代にかけてはエジプト音楽の黄金期と呼ばれ、アブデル・ハリム・ハーフェーズ や ファリド・エル・アトラシュ をはじめ、他にもたくさんのレジェンド達が活躍していた時代でまさに全盛期と言えます。 この時代のウンム・クルスームの楽曲は1曲が40分前後もしくはそれ以上にもなる長時間の大曲がほとんどで、そしてそのどれもがヒットした有名な楽曲です。 40分というのはレコードに収まる時間で収録されているだけで、実際はその時の進行のしかたによって尺はどんどん伸びるまさに生き物とも言えるような音楽です。

彼女の楽曲は4つの楽章で構成されていることが多いです。 1つの楽章のおおまかな構成としては 器楽 → 歌 → サビ といった形で、それが4楽章あるといった感じになるのですが、器楽パートが終わっても歌へ行かずにもう一度演奏したり、歌も同じ箇所を繰り返し歌ったり、先へ行ったと思ったらまた戻って一から歌を繰り返したりなど、お客さんの盛り上がりで進行が決められていくようなコンサートが展開されるために、上記にも書いたように結果的に尺がどんどん伸びてしまうために1曲が2時間に達するというのもザラだったようです。 歌手とオーケストラとお客さんでジャムセッションを楽しんでいるような感じなのかもしれません。

文章での説明も難しいので(笑)今回は僕の好きなウンム・クルスームの楽曲を3曲ピックアップして、それらのコンサート動画をご紹介しようと思うのでよければ是非ご視聴ください。 1曲が長尺にはなってしまいますが、どれもとてもドラマチックに曲が展開していくので非常に見応え、聞き応えがあります。

Aghadan Alqak(アガダン・アルカック)

まずは華々しいイントロから始まる「アガダン・アルカック」という曲です。 エジプトを代表する大作曲家、ムハンマド・アブデルワッハーブによる作曲で数少ないエジプトの二大巨頭の共演作となります。 アジャムというマカーム(アラブの音階及び旋法体系を表す語)による明るい曲調で始まり、段々と渋い曲調になる展開がクールな楽曲です。

Fat El Ma’ad(ファト・エル・マード)

続いて、渋いイントロから始まる「ファト・エル・マード」という曲です。 全体的に渋めの曲調ですが、微分音(半音よりも細かい微細な音程、アラブ音楽の特徴の一つ)を伴うマカームが多く使われていて独特な空気感を持っている楽曲です。

Leily Nehary La Ya Habeeby(ラ・ヤ・ハビービー)

最後に、ウンム・クルスームの曲はどれも流れが美しく、人を陶酔させる魔力を秘めていると思うのですが、その中でも特に自然な流れで美しく感じた曲、「ラ・ヤ・ハビービー」という曲です。 この曲は最近所属するグループで演奏することになり(コンサートはまだ決まってませんが、現在絶賛リハ中でして、実際に弾いてみると難曲です)、それで初めて聴いた曲なのですが、自分の中では彼女の数ある楽曲の中でも特に美しく、マカームの展開もとてもドラマチックですっと自然に身体に馴染むような感覚があった楽曲です。

・・・

いかがでしたでしょうか?

今回コンサート動画をピックアップしてみたので当時の観客の熱気なんかも感じられると思います。

他にもウンム・クルスームに限らず他の歌手の曲でもこの時代は黄金期と呼ばれるように名曲の宝庫ですので、是非機会があれば触れてみてください。

今後もこの連載の中でエジプトの音楽を紹介していきたいと思います。