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CULTURE

リズム探究の旅 ①

CULTURE, MUSIC

リズム探究の旅 ①

ブラック・カルチャーをルーツに踊る我々は、表現に幅を持たせる感覚を身に付けなくてはなりません。 特にリズムの捉え方は言うまでもありません。

お爺さんとお婆さんの絵に見えたり、音楽を興じている男女に見えたり、もしくは全体を捉えて1つとして見るこの騙し絵。

不思議な感覚を与えるこの絵と、同じような味わいがあるリズムの「騙し絵」ポリリズム

古代アフリカ(セネガル)の音楽で有名なタムタムのリズム、其れは女性たちが臼で粉をひくリズムから生まれたと言われています。 それぞれの女性たちが、大きさも重さも異なる臼をそれぞれの力加減で杵を引き、その時に発する音、其処に合わせた歌、そうすると微妙に異なるリズムが生み出されます。 この重ねられた複数の音とリズム。 これこそ彼らの音楽の基本であり ポリリズム の原点と呼ばれています。(生活と密接に繋がっていますね)

昨今では、HIPHOP世代の例えば ディアンジェロ、彼のアルバム「ブラックメサイヤー」

その中での2曲目の2’33″位からのコーラスのハーモニーなどは、ヨーロッパクラッシックのハーモニーとは異なります。 聴いて頂いたら分かると思いますが、この微妙なズレの重なりはアフリカ音楽のハーモニーなのでしょうね。

このハーモニーはポリハーモニーと呼ばれるモノでしょうが、やはりポリリズム的な味わいがありますよね。

音楽的な解説では良くみられますが、端的に言うと・・・

複数(poly)の「リズムのまとまり」が重なって進行しているリズム を指します。(但し “重ね合わせるリズムのまとまり” を比率に直した時に、 ① どちらも2以上 ② “互いに素” である)

ちょっと聴いてみましょう。

先ずは此れ

アフリカの方々のパフォーマンス
リズムが複数あり進行していますね。

クリス・デイヴ による フェラ・クティ の曲の演奏です。
これも複合されたリズムですね。

ダンスでもかなり前からこのリズム構成に合わせたモノがあります。 例えば、1970年代にアメリカで流行った踊りを観てみましょう。

ジェームス・ブラウン の ブガルーダンス です。 此れ、首は3、足は2でカウントを取りながらそれぞれが異なるリズムで踊り、1つの身体でポリリズムを表現していると言えるのでは無いでしょうか?

カリブ海周辺のラテン音楽はポリリズムを感じるモノも多く、やはり由来は西アフリカからのリズムとスペインからの奏法が影響していると思います。(ジェームス・ブラウンのブガルーダンスは1960年代中頃から1970年位に流行ったラテン・ブガルーミュージックで踊られたダンスから由来しています。)

このポリリズム、ダンサーにとっては高揚させられる場面もあり楽しいですよね。
そしてダンサーがこの構成に参加できるアプローチは古くからラテン舞踏にあったんですよ。

フラメンコやサルサなんかが良く使う言葉、ア・ティエンポ(a tiempo ) コントラ・ティエンポ(contra tiempo)

表と裏・・・

前者が主となるリズム通り、後者はズラすく若しくは逆らって(つまり裏で)音をとるといったところでしょうか。

▼ フラメンコのコントラ・ティエンポ

此れを我々のやるステップで表現すると
1、2、3−❹、5、6、7−❽

言葉でカウントをとるときは
1、2、3、5、6、7

こんな感じで、此れがア・ティエンポです。

* ストリートダンサーがよく使うワン・エイトの時間サイズを表記しています。
* ❹(❽)は休みではなく3(7)から繋がっています。

ア・ティエンポで踊る、即ち主となるリズム、クラーベに合わせて踊るについて、下記の動画で楽譜は使わずストリートダンサー目線で行っていますので合わせて参考にしてみて下さい。

▼ ソンクラーベをア・ティエンポで踊る

対して、

8−❶、2、3、4−❺、6、7
上記のストリートダンサーのカウント取りで考えるとこんな風になるのがコントラ・ティエンポです。

言葉でカウントをとるときは
8、2、3、4、6、7、8、・・・

此れはバッキングのコンガのリズムを意識し、

「ト、トン」(8−❶)、2、3
「ト、トン」(4−❺)、6、7

ですね。

* このコンガのリズムを「トゥムバオ」と言います。 2と6でスラップビートが入るのでステップは此処でアクセントをとります。

ア・ティエンポと比べると1つズレていますよね?
参考までに、此方の動画でも取り上げさせて頂いています。

▼ コントラ・ティエンポへのアプローチ

* 8と4でステップをミュートしエネルギーのはじまりがくるので ❶と❺は休みではなく、8−❶(❺−6)で1つと捉えます。

* コンガの音「ト、トン」は1.5カウントの時間サイズ(ストリートダンサーの8カウントを基準として)ですので「ト、トン」の「トン」はシンコペーションしています。

此方はシンコペーションをステップで解説しています。

▼ シンコペーションを意識して踊る

改めて並べてみると

1、2、3−❹、5、6、7−❽(a tiempo)
2、3、4−❺、6、7、8−❶(contra tiempo)

こんな感じのズレがあります。

クラーベは勿論、トゥムバオや様々リズムが同時に進行しています。 そこにダンサーは a tiempo でステップを踏んでみたり、contora tiempo で踊ったりする事で、ポリリズム構成に参加できます。(2人以上が其々に行うと踊っている本人達も感じるはず、そして視覚的にもその様に映ります)

昨今のダンスミュージックは、欧米発以上に世界的に影響を与えているアフリカやカリブ海周辺の国々のモノ、其処にはクラーベをアレンジしたリズムも含まれています。

▼ WizKid Feat. Femi Kuti – Jaiye Jaiye

今回述べさせて頂いたアプローチは様々なダンスにも落とし込みができると思いますので、是非チャレンジしてみて、表現の幅を広げリズム探究の旅を楽しんで貰えると幸いです。