Good Life Cafe
突然ですが「カフェ」の発祥の地は何処か?
トルコはイスタンブールらしい。
イスタンブールは8年前に訪れた街で確かに絶妙な位置にカフェが点在。
其処からボーっと外の景色を眺めながらチャイ(現地の方が良く飲む紅茶、インドのチャイとは違います)を飲む。不思議にリラックス出来る瞬間が其処にはあります。
イスタンブールは坂道が多くてちょっと休憩に利用していたのが懐かしい。
大阪ではJR天満駅近くの高架下にあった喫茶「レオ」(無くなってもう20年は経っているかな?)天井も高く2階もあり非常に居心地が良かったのも懐かしい。
此処は喫茶店だったけど開放的な空間はある意味ではカフェを感じさせられた思い出の場所。
懐かしい場所と同時に今はもう無いが、行ってみたかった場所もあります。
さて今回はその中の1つ、とあるカフェのお話しです。
其処はかつてサウス・ロサンゼルスにあった小さな食料品店を兼ねていた所。
1989年にオープンしたそのカフェ、オーナーの意向もありオーガニックで健康的な食品を専門に取り扱っていました。店名からも何を目指しているか伺えます。
このカフェは社会貢献の観点から毎週木曜日の20時〜22時には店内を開放し、地域の若者達にラップをフリースタイルで行える場としての提供を行なっていました。
このオープンマイクでのこの場は評判となり、僅か数十人のキャパの店内は溢れ返り兎に角スキルを競い合ったとのこと。
そして此処での独自のルールがありました。
- 一切のカースワード(罵倒語)は使用禁止
- 無意味な埋め言葉は厳禁
- 壁の絵画に凭れ掛かってはいけない
- ガムは禁止
こんな感じでルールを破ったり、聴衆の受けが悪かったりしたらすぐさま「マイクを渡しなさい!」と宣告され退場させられる・・・
以前、私が寄稿した
其処ではギャングスタ・ラップの味わい方の解釈を伝えていますが、勿論LAにはギャングスタ・ラップ以外も当時からありました。
アメリカの西海岸はギャングスタ・ラップの発祥地ですが、同時にラップを行う技術の向上を此処「Good Life Cafe」で行われていたのも事実です。
日本では未公開ですが「THIS IS THE LIFE」
此処で起きた事をドキュメント映画として2008年に公開されています。
▼ THIS IS LIFE|Official Trailer
▼ Freestyle Fellowship LIVE at the Goodlife Cafe. 1990’s
▼ Good life Cafe footage
その様はまるで1940年代に Minton’s Playhouse にて往年のジャズミュージシャンである、セロニスアス・モンクが、チャーリー・パーカーが、ディジー・ガレスピーが、夜な夜な新しいジャズを模索する為に集まり熱いセッションを繰り広げられた様を彷彿させられます。恐らく Good Life Cafe で行われたスタイルは、さながらジャズミュージシャンのようにライムをリズミカルに刻む所謂縦割り感を重視した「チョップ」と呼ばれる技法を使われる人も少なくなかった事によるからでしょう。そして其れは現在も影響を与えています。
そして特筆なのが、何よりもポジティブなメッセージを含ませている事が魅力的であり文学的でもあります。だからメインストームには露出されないが確実に存在意義を発揮していたのでしょうね。
Good Life Cafe で活躍した面々は、インディラップと括られるかもしれないが実力はメインストームに引けを取らなかった。(現に某有名ラッパーが打ち負かされマイクを奪われています)
正に現場で育んだスキルはシンプルな音節のライムを複数音節のライム、更に重層的になり複雑な言葉遊びを高度な処へと引き上げたに違いない。
間違いなくHIPHOPをより文化的価値を上げた、ここ「Good Life Cafe」
もう訪れる事は出来ませんがこういったアーカイブを是非確認して頂ければ幸いです。
しかしながら私はリアルタイムで近くまで足を運びながら、ローザ・パークスも訪れた事のあるこのカフェに行けなかった事が悔やまれますよ。
・・・
※ 70年代後半ラップは基本的に「2小節(上の句 / 下の句1小節ずつ)」対となる押韻の反復から成り立ち、この括りの中でいかにライムパターンや言葉の意味世界を工夫するかが焦点だったのが、80年代後半からはシンプルな単語韻から複数音節の韻へとより複雑なライムへと向かっていきます。80年代末から90年代後半にはさらに音節の拡大とラップゲームが高度化されていきます。
参考文献:「インディラップ・アーカイブ」DU BOOKS